long dream2
□寒くなってきたね
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夏休みも終わり、私は最近没頭している趣味がある。
それは写真だ。
サークル活動も行っているけど、もう一つ入っている写真部の活動も実は地味に行っている。
11月下旬に学園祭があり、今はそこで展示する写真を撮っている最中だ。
自分専用のカメラはバイト代で購入した。
今日、空を見上げるととてもきれいな入道雲が見えた。
カメラを持って自転車に乗り、空を撮る事にした。
ついでに携帯でもそれを撮って、チャンミンに送る。
―きれい!かんこくもはれ^^
チャンミンからはすぐに返事が返ってきた。
同じく韓国の空を写した写真は綺麗で、遠くに山が見える。
彼らは先日韓国での3枚目のアルバムを出して、現在は母国でハードなスケジュールを過ごしているという。
来月まで日本に来る予定がなく、逆に私は暇になってしまった。
思う存分空を撮って、大学の部室へ向かった。
「あき、また来たの」
部室には写真部の先輩のつくしさんがいた。彼女は授業を受けずにいつも部室にいて、何年も留年しているらしい。
彼女曰く自分は芸術家だからマイペースなんだとか。
「はい、またたくさん撮ったので」
フィルムが一杯になっては現像をしにきている。
つくしさんは窓際で煙草を吸いながら、束になった写真を一枚一枚眺めていた。
「もうすぐデジカメの時代になるわね」
暗室から出ると、つくしさんは古い社長椅子のような椅子に背をもたれて大きく伸びをした。
「デジカメの一眼レフが出たら私も買います!」
「け、これだから今時の若者は」
つくしさんは長い黒髪をかきあげて顔をしかめた。
無言でそっと手を伸ばすつくしさんに、出来上がった写真を渡す。
彼女は煙草を置いて、無表情でそれを見た。
「あきの写真は素直だよね」
「え?そうですか?」
「うん。ひねくれてない」
彼女が褒めてくれているのかがよく分からず、会釈を返した。
「人物は撮らないの?」
「うーん、友達といる時はカメラ持たないんで」
「撮ればいいのに。」
あきのカメラの前ならきっと、被写体は笑顔になる。
と言って短くなった煙草を再度口にくわえた。
「えへ、嬉しいですー」
笑って頭をかくと、つくしさんは意地悪く笑った。
「プロにはなれないだろうけど」
褒めたままにしておいてくれればいいのに。
「いいんです私は幸せな家庭を築ければ」
「け、ゆとりが」
つくしさんにさよならを言って部室を出た。