long dream2

□初デートは大変
1ページ/3ページ

鏡の前に立って淡いピンクのワンピースと黒いワンピースを交互に体にあてる。

「ピンクはやりすぎ?黒だときつく見える?」

独り言を呟きながら選んだのは黒いワンピース。

水色の半袖カーディガンを羽織って、ヘアアイロンのスイッチを入れた。


「チーク濃すぎた…」

頬をこすってチークを薄めていると、段々他のメイクも気になってくる。

そんな事をしているうちに時刻は14時。急いで髪の毛を巻いて家を飛び出た。

昨日からまた日本にやってきた彼らのために夕飯を作りに行く。

だけど今日は夕方から用事があるので急いで仕度をしなくてはならない。


大きなビニール袋2袋を持って宿舎に入れば、ちょうどトイレから出てきたユノと出くわした。


「あれ?ユノさん」

「お、あき」

ユノは大分足の調子も良くなり、ゆっくりだけど歩けるようになっていた。

今日はダンスの練習でお留守番だそうだ。


『あき遊びに行こうよ』

一人ではつまらないと言って出かけたがるユノ。

「ごめんなさい。今日は用事があるんです」

ネギを切りながらそう答えると、首を傾げるユノ。

『ごめんなさい』

もう一度韓国語で答えれば、ユノは微笑んだ。

『どこか行くの?』

「友達と…遊びに行くんです」

お父さんに隠し事をする子供の気分。


「きょう、おしゃれ。デイト?」

ばっと振り向いた姿は焦っているように見えただろう。

すぐさま厳しい表情になるユノ。

「チンチャ…?」

Tシャツの袖を肩まで捲くり上げ腕に力を入れている。






「あきアンデ!」

「ダメじゃないもん!私だって女の子だもん!!」

急いで肉を炒めて味付けをし、ご飯を炊いて宿舎を出る準備をした。後ろではユノが肩や腕に触れながら娘のデートを阻止しようとする。

物凄い勢いで韓国語を放つユノだけど今の私にはまだ理解できない。

ジェスチャーを見ると恐らく、


『こんな化粧して!髪の毛までくるくるして!俺の知らない奴とデートなんて許さん!ちゃんと紹介しなさい!!』

と言っている。


「ユノさんだって彼女いるでしょ!私だって彼氏が欲しい!もう19歳だよ!」

私の日本語を理解しているのかいないのか、ユノはこう返してきた。


「あき!まだこども!」



「子供じゃないもん!」

ユノが走れないことをいい事に、私は宿舎から走って逃げた。

ユノが名前を呼ぶ声が聞こえたけど、振り返らなかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ