long dream2

□Begin 始まり
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私がライブに初めて行った日から数週間経って、彼らは福岡にいた。



―あき、メールありがと!


珍しくユチョンから電話が掛かってきて、またこれも珍しく日本語だった。


「今日福岡公演ですよね?がんばってくださいね!」


本日は6月4日、ユチョンの20歳の誕生日を迎えた。

0時を狙って誕生日のメールを送って、今日の朝ユチョンは忙しいだろうに電話をくれた。

そしてユチョンの誕生日は福岡公演の当日で、ユチョンはいつもより元気そうだ。


―がんばる!call again later!

“また電話する”と言ってユチョンは電話を切った。



その日は日曜日で、久しぶりに予定がなかったのでルミ子に連絡をした。


―やっだあきちょーひさしぶりじゃん!ご飯たべいこーよー!!

卒業してから既に2ヶ月以上も経っていて、毎日一緒だったルミ子とはしばらく会っていないような気がした。



「あき!」

待ち合わせをしていた渋谷でルミ子が少し遅れてやってきた。

ルミ子はギャルを卒業したらしく、元々整った顔だったので急にきれいになった気がした。


2人で買い物をし、高校生の時によく行ったマックに入った。


「大地は元気?」

「ちょー元気、元気すぎてあいつの性欲を誰かに売りたいくらいだよ」


「そ、そういう話してるんじゃないし…」

Lサイズのコーラを3分の1も一気飲みしてしまった。


「あきは好きな人くらいできたわけ?」

ストローをくわえながら、視線が上に行く。

頭の上に浮かぶのは、笑顔がやさしいあの人。


「うーん、ちょっとだけ気になる人はいる」

「だれ!だれだれだれ!イケメン!?」


身を乗り出してくるルミ子に圧倒されながらも、首をかしげる。

「かっこいいけど…好きなのかは分からなくて…」

「向こうはあきのことどう思ってるっぽいの?」



「やさしくしてくれる…かな」

ルミ子はポテトをひたすら口に運んでいる。

そしてその手を止めて、こう言った。


「いいじゃん適当に付き合ってみれば?やさしいなら大丈夫だよ」


適当に、付き合う?


そんなことしていいのだろうか。
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