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□眠りに落ちたお姉ちゃん
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「…ねぇ、霰ねぇ」
「にゅ…?」
「こんな所で寝てたら風邪引くよ」
ここは広い宿舎のダイニングのソファ。隣にジロちゃん、膝の上には彼のお昼寝用のタオルケット。
どうやら今朝の早起きと練習の疲れがたたって眠っていたらしい。
「ほら、寝るんだったら部屋行って?」
「ぬ〜…、まだ平気」
「なんや霰ちゃんの方が妹ちゃんみたいやねぇ〜」
「あ、小春ちゃん」
隣のジロちゃんを起こさないように立ち上がり、小春ちゃんの隣に行く。
「う〜ん、そうかもしんない。僕焔に頼りっぱなしだし…」
「そんなことないよ!あたしだって霰ねぇ頼りにしてるもん!!」
「焔…」
感極まって焔を抱きしめる。ああ、至福。
「あらあら、仲良しやねぇ アタシもやってほしいわ〜」
「いいよ〜」
焔から離れて小春ちゃんを抱きしめる。うん、焔とは違った抱き心地。
なんか近くで「浮気か小春!!」って聞こえるけど気にしないことにした。
…あ、寝そう。
「霰ねぇここで寝ちゃダメだよ」
「ん〜…、僕やっぱ寝てくる。おやすみ焔、小春ちゃん」
「おやすみ」
◇
重い体を引きずりながら階段を昇る。次の瞬間、踏み外したのか重力に引っ張られた。
ヤバい、落ちる…!
「危ない!」
誰かに抱き留められた。眠いのを耐えながら見上げたら、緑川だった。
「大丈夫か?」
「ごめん、緑川…」
「平気ならいいけど…。部屋まで送るよ」
「ちょっと待ったー!!」
大きな声のした階段下を見ると、花柄模様の帽子をかぶった松野がいた。
可愛い帽子だなぁおい。それがナイトキャップなら入院中もかぶってたのか?
「緑川だからどうせすぐ階段から落ちるでしょ!」
あ、おぶってく前提だったんだ。
「だから、霰は僕が連れてく」
「それならマックスだって同じだろ!」
「僕は鍛えてるから」
「俺だって鍛えてるもん!」
「お二人さん、そこまでにしんしゃい」
ふと頭上から響いた声。頭をあげるとちさとちゃんが穏やかな顔で笑ってた。
ちさとちゃんは階段を降りて僕達がいるところまで来ると、優しく僕の頭を撫でてくれた。
「霰、めちゃくちゃ眠そうたい。ほら、寝るんなら部屋ば行くと」
「ん〜…」
ちさとちゃんは僕をお姫様抱っこすると階段を昇りはじめた。あ、小さな揺れが心地いい。
気付いたら、松野と緑川の声が遠くなって聞こえなくなった。
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