□終わりなきメロディー
1ページ/2ページ



衣装部屋に押し込められたかと思えば、左京がドレスを出してきた。

「本日のドレスです、お嬢様」

箱を渡されたかと思えば、かわいらしいカードが入っていて、そこには

『卒業おめでとさん Y』


と書いてあった。その丸字で少し右肩上がりな文字は見覚えがあった。大好きな幼なじみからだ。僕はそっとそのカードをいつも使う手帳に収め、ドレスを着た。そして左京からメイクをしてもらい、会場に行くと宮村さんと霰ねぇが一緒に喋っているようだ。景吾の挨拶が終わり、プロムは幕を開けた。

「…焔さん」
「ん?なぁに?」

若と踊っている時、ぼそりと僕の名を呼び、僕を見つめる。

「腕、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、まぁ、あんまりテニスは出来なくなっちゃったけどね」
「…ありがとう、ございました、焔さん…」
「うん、頑張って若。景吾みたいにならなくて良いの、貴方は貴方だから。これからは、僕らでは作れなかった氷帝を作って?」
「もちろんです、必ず誇れる部活を、氷帝を作って見せます。」
「楽しみにしてるよ」

そう話していると、一曲終わってしまった、僕は若と別れ、雷門や帝国のいる所に向かった。流石に慣れていないらしく、みんなキョロキョロしていた。

「守君」
「おう!すごいんだなプラムって!」
「プロムだよ、守君。まぁこんなに豪勢なのは景吾や、榊監督の力だよ。」
「…こんなとこに俺らがいて良いのか?」
「もちろん構わないよ風丸君。」
「ナイツオブクイーンの時もだが場違いな気がするな」
「修也も、大丈夫。このプロムはアタシや景吾主催だから、そこまで形式ばってないしね」
「それにしても本格的だな」
「ふふ、今回は豪勢にしたし、去年よりは値は張ってるからね。鬼道君。」
「なァ焔」
「ん?何かな明王」
「あとで一曲、いいか?」
「ええ、構わないよ。だけどラストワルツはダメかな。」
「どうしてだ?」
「ん?ああ、ラストワルツはアタシと景吾、歴代のキングと今回はクイーンが踊る仕組みなの。」
「へェ」
「さ、ちょっとアタシ行ってくるね」

アタシはオーケストラがいるところに歩き出した。



焔が行ってしまった刹那、氷帝学園の生徒であろう女性が此方に向かって歩いてきた。

「すみません、焔さんはもう行ってしまいまして?」
「ああ、オーケストラの方に行ってしまった。」
「あら…ありがとうございますわ。」
「すまないが、」
「はい?」

どうも焔を探しているようだ。すると鬼道が女性に話しかけた。

「ラストワルツのしきたりなどを教えてもらえるか?あるいはジンクスとか」
「ああ、ラストワルツには様々な言い伝えがありますの。例えば、歴代のキングとクイーンは踊らなければならない、とか、有名なのだと恋のジンクスですわね、ラストワルツを踊った男女は結ばれるとか。ラストワルツではありませんけども、最後の打ち上げ花火に熱いキスをすると2人は結ばれるとか。この学園はそう言ったたぐいが大好きですから、様々なジンクスがありますの」
「「「「「…」」」」」
「あら、どうされましたの?」
「…ジンクス、なんだな?」
「ええ、でも毎年3〜4組は居ますわよ?」
「「「「「…」」」」」
「あら?」

すると、いきなり照明は暗くなり、真ん中にあるステージに照明がぽっかりと照らされた。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ