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□命のチカラ
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「…やっぱり、か…」
フィールドの中では攻防戦が続く。アタシはシュートチェインになりそうなボールを見計らった。すると、チャンスが巡ってくる。
「風林火山デストロイヤー!」
「いただくよ、それ!」
アタシはそのまま走り込み、風林火山デストロイヤーをシュートチェインにするために、あの感覚を呼び覚ました。
「アレは…!!」
「「「「"天衣無縫の極み"…!!」」」」
テニスで出来る天衣無縫の極みをサッカーに引用する。サッカーを楽しむ、その心を忘れて欲しくなくて、アタシはこの技を繰り広げる。
「ねぇ!守君!」
「っ!?」
「大人が何故化身を使えないかわかる?」
「…なんで、だ?」
「それはね?」
1つは先入観と共に型にはまった大人は有り得ないと決め付けて全てを否定するから。そしてもう1つは大人が化身を使うには代償が必要である。その代償とは…
「命だよ、円堂君」
「命?」
「そう、命。命のチカラを削り、使う事で大人は化身を使う事が出来る。」
アタシは目を閉じて、また意識を集中させる。
「僕の化身…行くよ!創聖の神 アマテラス!」
赤く神々しい光が全てをつつむ。日本神話で、初めて混沌から世界を作り出した創聖の神、天照大神を象ったアタシの化身。赤い巫女服を身に纏い、鈴を手に持った女性の化身が現れた。
「焔姉さん…!!」
「やめてくれ、姉さん…!!」
シュウや白竜の声が聞こえる。アタシはふっと笑い、風林火山デストロイヤーを纏ったボールをアタシの足元に引き入れる。
「…懐かしいの、行こうか。アマテラス。」
『ああ、そなたが思うままに進みなさい。我が主。』
「…ありがとう。」
懐かしい感覚。懐かしい、アノ技。
「焔…!!」
「ファイアートルネードッ!」
「ゴッドハンドV!」
渾身のファイアートルネードを止められてしまい、アタシの化身アマテラスは消え、バランスを崩し地面に叩きつけられた。
「くっ、ぅ…」
「「焔姉さん…!!」」
「大丈夫、よ…」
「不知火、来い。聖帝がお呼びだ。」
「待って下さい!牙山さん!」
「焔姉さんは化身を出して体が…!!」
「五月蝿い、さっさと来い不知火!白竜よ!万が一負ければオマエたちは、存在する価値が無いのだ!わかっているな!?」
「…牙山ぁ!ふざけたこと抜かすと三枚に下ろすわよ…!」
「焔姉さん…!」
ガッと腕を捕まれながらアタシは牙山を睨んで立ち上がった。
「さっさと来い!!」
「言われなくても行ってやるわ!」
「焔、姉さん…!」
「…、シュウ、白竜…大丈夫よ。あなた達は戻りなさい。」
優しくくしゃりと撫でればアタシは牙山に引っ張られるがまま歩き出した。
「待ちなよ。」
いきなり止められ振り返ると霰ねぇを含めた、僕に関わったみんなが牙山を睨んでいた。
「僕の妹になんて事してくれてんのさ。」
「ハッ、お前が不知火霰か。」
「そう、あんたが散々こき使って、散々虐めてくれた大切な妹の双子の姉だよ。」
「ああこの使えない女のか。」
「使え、ない?」
イライラがマックスになりながらであろう霰ねぇ手がミキッと音がした。
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