君ノ瞳二恋シテル

□お祭りの夜は
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「ねぇ、見て見え!」


ジトジトと体にまとわりつく暑さに
ぐったりしながら、

アイスキャンディを口に頬張ると


あかねがおれに言った。




なんだよ、と暑さに負けながら
あかねの声の方へ振り返ると

真っ赤な浴衣姿のあかねが
機嫌良さげに
おれを見下ろしていた。


その場で
くるりと一回転して
満足そうに微笑む。


「昔、かすみお姉ちゃんが着てたのを仕立て直ししてもらったの。」


あ、ちょっと、本当にちょっとだけ。
こいつ…か、かわいい。


思わずゴクリと
生唾を飲み込むと

あかねはおれの顔を覗き込み
ねぇ、いいでしょう?
ねぇ、かわいいでしょう? と言った。



心のなかで
何回ものかわいいを言ったあと、

おれはあかねに
胴着ほどじゃないけどな。と


顔が火照るのをバレないように
悪態をついてしまう。




ぴきっとあかねの頭に
怒りが浮かぶ音に気づくと
おれはもう既に
あかねに殴られた後だった。


「乱馬のばかぁーーーっ!」



ばかやろう。
ばかはお前だろ、あかね。

浴衣姿とか、世が世なら反則だぜ!?
つまり、その可愛すぎで。



殴られて
庭の方へ飛ばされながら

中でそんな事を考えていた。
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