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□聖夜の告白。
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「…ちっくしょー」


まさかの友達のドタキャンメール。
彼氏かちくしょー…。

せっかくのクリスマス、なのに私に彼氏はおらず。

両親も私が出掛けると知ったら、二人で出掛ける計画立ててたから多分家にはいない。

前記の通り友達にもドタキャンされ、一人寂しいクリスマスを過ごすことになった私であります。


「あーあ」


見渡せばカップルカップルカップル、あーもー嫌になる。

どっかにいい男いないかなーなんて…


「…凍夜?」
「ほえ?」


突然イケメンボイスに呼ばれて振り返ると、そこにはクリスマスに一人でいるなんて考えられないような人。

うちのクラスで一番モテる、サッカー部のストライカー。


「…南沢くん」
「なにしてんだよお前、こんなとこで」
「いやいやいや、その言葉はそっくりそのまま南沢くんに返すよ。彼女は?」
「はあ?いねえよ、そんなの」


うっそ!!

えっ、しょっちゅう告白されてるのに!?付き合ってないの!?


「う、うそ!」
「本当だっつの。お前だって、彼氏とか…」
「いないよ!いるわけないじゃんか!」


こんな私に彼氏なんてできたら奇跡だよ!


「なんで?」
「え?な、なんでって…」
「お前、可愛いのに」


…かああっと顔が熱くなっていく。

ダメだ、この天然タラシ。
そんな恥ずかしいことさらっと言うからモテるんじゃんよ。


「…何も出ないよ」
「本心だけど」


…何この人恥ずかしい。

嬉しい以前に恥ずかしい。
なんでこの人こんなに女の扱い慣れてるの。


「…もー。私なんて口説いたっていいことないよ?」
「…口説いてるわけじゃねぇし。なあお前さ、もしかしてヒマ?」
「え?うんヒマだよ。今帰るところー」
「っ…じゃあ、さ…」


「俺と、デートしないか?」


耳がおかしくなったかと思った。










「いーの?一年に一度のクリスマスイヴを私なんかと過ごしててさ」


南沢くんなら、いくらでも可愛い女の子、オトせるだろうに。


「…別に。嫌なら声掛けねえし」


…あーあ、たまたま近くにいたから誘ったんだだって、分かってるのに。

そんなこと言われたら、舞い上がっちゃうよ。


「…お前こそ、良かったのかよ。俺で」


え、そ、そんなこと聞かれても、返答に困る。

南沢くんかっこいいし、紳士だし、何も文句なんてつけられない。

むしろ、一緒にいられて、嬉しい。

でもそんなこと言ったらやっぱ引かれるかなー…なんて、


「…嫌、かよ?」


珍しく不安そうな顔で私を見上げてきた南沢くん。

ごめんなさい私なんかが貴方にそんな顔させてごめんなさい!!


「ぜ、ぜんっぜん!!一人だったし寂しかったし、誘ってくれて嬉しかった!!誘ってくれたのが南沢くんでよかっ……あ、」


うわあああ私!!最後の一言いらない私!!余計なこと言うな私!!


「あ、あ…えっと、」
「…そ、っか」


…え、南沢くん?

…ねぇ、僅かに頬が赤いのは、寒いから?

それとも、…自惚れていいのかな。

なんてごめんなさいやっぱり自意識過剰だよね!!ごめんなさい!!私なんかがごめんなさい!!


「…あ、のさ…凍夜」
「ひゃいっ!?」


うっわ盛大に噛んだ。恥ずかしい。


「…名前、…呼んでもいいか?」


……へ。

名前って、名前…っていや、え、私の!?


「は、ははははいっ!!南沢くんがよければ…!!」
「…ありがと、…瑞希」


あ、ヤバい、キュンってきた。

そんなの、反則。


「あ、あれ!あっちのツリー見に…」
「なあ…」
「は、はいっ!?」
「…手、繋いでも、いいか」


…えっちょっとストップ南沢くん、私相手に気でも狂っ…!?


「嫌、なら…いいけど」
「い、嫌じゃないっ!お、おおお願い…シマス…っ」


私がそう言うと、彼はゆっくりと私に近付いてきて、そっと手を握る。

それも、恋人繋ぎというやつで。

…顔が熱い。
それこそ、溶けてしまいそうなくらい。


距離が、声が近い。緊張する。

高鳴る胸の音、聞こえていませんように。


「…お前、俺のこと知ってたんだな」
「え、だ、だってクラスメイトだし。み、南沢くんこそ、よく私のこと知ってたね!」


クラスメイトだから、なんて嘘。
ほんとは、ずっと前から見てた。


「…好きだから」
「そ、そっか……え?」
「お前のこと、ずっと好きだったから」


今度こそ、耳が壊れたかと思った。
好き、って、お前、って、わ、私…?


「…え、あ、」
「…ごめん、やっぱ俺、帰るわ」


そう言って手を離して、走っていってしまう南沢くん。

まだ、私はドキドキしてる。


見えなくなる背中に、私も好きだよって呟いた。



 
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