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□依存性。
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探していた少年の姿を目端に捉え、私は彼に向かって手を振った。
「蘭丸!一緒に帰ろ!」
声に気が付いて私の方に歩み寄ってくるのは、私の大好きな人。
容姿端麗な、自慢の彼氏。
「…叫ぶなよ…」
…嬉しいくせに、そんな素っ気ない返答。
驚いていないところを見ると、多分私がここで待っていることを期待していたんだろう。
彼がこんな冷たい態度をとるのは、親しい異性にだけ。私にはちゃんと分かってる。
自惚れてるわけじゃない。私の彼氏、霧野蘭丸は俗に言う『ツンデレ属性』なのだ。
「あれ、神童くんは?」
「…先に帰ったけど?」
あ、ヤバい。不機嫌値が上がった。
でも蘭丸が嫉妬してくれてるんだ、って思うとにやけが抑えられない。
「…何、にやけてるんだよ」
「んーん、別に?」
そうは言ったものの、にやけは止まらない。
しばらくにやにやしていると、彼はその意図を理解したらしい。ふいっと視線を反らされてしまった。
そんなところも、可愛くて仕方ない。
「じゃあ行こっか、蘭丸!」
「…ああ」
ぎゅっといつものように手を握ってやると、やっと蘭丸の機嫌が回復した。
「それでさ、これがまたふわっふわでさ!ちょこちょこ寄ってくるんだよ〜!!」
「へえ…可愛いな」
私の愛犬が子供を生んだ話をしていると、珍しく蘭丸が笑う。
今日学校であったことの話なんかでは、返事はしてくれるけど笑ってはくれない。基本ずっと照れたような無表情のまま。それがまた可愛いんだけどね!
「よかったらさ、今度見に来てよ!蘭丸、動物になつかれやすいからきっとすぐに寄ってくるよ!」
「ん…ああ、そうだな……」
おお、珍しい。脈アリだ。
家に来て、なんて言ったら、いつもは顔を真っ赤にして拒否するのに。
「…また今度、時間があったらな」
「うん!待ってるよ!」
来た、この返事はOKの代名詞なのだ。
そんな細かなことまで脳が記憶している…というよりは身体が覚えている。
私はもう、依存性なくらいに彼に夢中になっているのだと再認識。
「あ、そうだ。サッカー部はどう?」
「ああ、最近になって、ようやくチームが纏まり始めたんだ。良い傾向だと思う」
「そっか!やったね!」
私は彼と歩く帰り道、当たり前のように、必ずサッカーの話を切り出す。
蘭丸がサッカーを好きだから私もサッカーを知っておきたい。…それも、あるけれど。
何より、サッカーの話をしているときの彼の表情が、大好きだから。
でもどう頑張ったって、いくら私を好きになってくれるように色々努力をしたって。
私はきっと一生サッカーには勝てないんだって、ちょっとサッカーに嫉妬してみたり。
でも、それでも私は、何よりもサッカーが好きな蘭丸が、誰よりも大好きだから。
…まあ…だから、私だけを見てほしいって我が儘が言えないんだよね。まったく、困ったものだ。
「次の試合も近いんでしょ?応援してるから!頑張ってきてね!」
私がそう言ってガッツポーズをすると、彼はゆっくりと俯いた。
「蘭丸?」
「…なあ、凍夜」
「ん?」
「あ、その……いや、……ありがとう」
「…え?」
今、物凄く、小さな声で。
『ありがとう』と、聞こえた気がした。
だめだ、願望が幻聴まで生み出すようになったのか私。末期なのか私。
「…な、なんでもない!…気の迷いだ、気の迷い……」
今まで見たことないくらいにその端麗な顔を真っ赤にして、そっぽを向く蘭丸。
ぶつぶつと独り言のように呟いて一人葛藤をする彼氏に、私は衝動が抑えられなくなって抱きついた。
彼氏が可愛すぎて、依存性です。
(俺に夢中な、君に夢中。)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
よく分からない。
ツンデレが書きたかっただけ。
蘭丸くんは女子でも彼女でも普通に話が出来る子だと思います←