ロリ転校生

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「そういや、C組に転校生が来たんだってな」


今一番聞きたくなかった話題。俺がぴくりと肩を揺らすと同時に、霧野が笑い出した。

……これほどまでに親友を殴りたいと思ったのは初めてかもしれない。


「な、なんだよ?いきなり笑い出して…」
「いや、ちょっとな……ぶっ」
「笑うな霧野聞くな倉間」
「は…?」


すまないな倉間、事情を語るわけにはいかないんだ、というか語りたくもない。


「ちゅーかその転校生、聞いた話じゃ、マネージャーになるんだろ?」
「………は?」


突然会話に割って入ってきた浜野の楽しそうな声に、俺は間抜けな疑問符を返す。

いや待てマネージャーって、サッカー部の?


「あ、それ、俺も聞きました。前の学校でも、マネージャーやってたって…」
「…お前らはその情報をどこから仕入れてきたんだ」


まったくもってその通りだ、キャプテンの俺にすら知らされていない新しいマネージャー入りを、何故二人が知っているのか。


というか……サッカー部に入るのか、城ヶ崎さん。

…まあ歓迎はするが、できればあまり関わりたくなかったのに。


…目の敵にされるのが、安易に想像できるな。


はあ、と俺が重いため息をついた瞬間、部室のドアが開いた。

だが、どうにもドアの開き方がおかしい。

なぜ、自動ドアが手動で開けられているのだろうか。


というか、頑張ってるな、開けてるやつ。


「ひーらーけーっ!!もー!!立て付け悪いよっ!!」


……どうにも耳に残るロリ声が聞こえたが幻聴だろういや俺は幻聴だと信じるだから霧野笑うんじゃない。


「ふぬぬぬぬーっ!!」
「うわっ…凄い馬鹿力」


倉間がそう呟くと同時に、やっとこさといった風に人が一人通れるだけの隙間が開く。

…忘れがちだがここのドアは自動だ。


「はあっ…あ、えっと、二年C組城ヶ崎美波!サッカー部マネージャー希望です!キャプテンさんはどなたですか!!」


そう言って頭を下げる城ヶ崎さんに、正直全速力で逃げ出したくなった。

ここで俺が名乗り出たら気まずくなるの前提じゃないか。


「ぶふっ…し、神童、お呼びだぞ…ぶはっ!」
「霧野、後でゆっくり話がしたい。先に帰るなよ、絶対だからな」


お前は人の不幸を全力で笑うような非道なやつだったのか霧野。というか、そこまで笑うほどのことか。


だが…まあとりあえず、呼ばれたのだから仕方がない。不本意ながらも、俺は彼女の前まで歩み寄る。


「なっ、神童くん!?うわ、サッカー部だったんだ…」
「悪いか。…それで、何の用だ?」
「悪いわけじゃないけど……って、私はキャプテンさんに用があるんだよ!」
「だから俺が用事の内容を聞いているんじゃないか」
「だから!私が話さなきゃいけないのはキャプテンさんであって…!」


…まあ、キャプテンは俺だと言ってしまえばいいわけだが、必死に身振り手振りで説明をしようとする城ヶ崎さんがなんだか面白いので、とりあえず事実を隠して会話をしてみた。

…言っておくが、決して俺がSなわけじゃない。


「ああもうっ、いいよ!神童くんとの話は終わりが見えない!えっと…あ、そちらの方!」
「ん、俺?」


相手が俺では埒があかないと思ったらしい彼女は、とりあえず一番近くにいた浜野に声をかける。賢明な判断だ。


「あの、キャプテンさんはどちらにいらっしゃいますか?お会いしたいのですが…っ」
「そこだけど」
「へ?」
「目の前にいるじゃん、キャプテン」
「……?えっと……」


とりあえず俺の方に向いて不審な顔をしてから浜野に視線を戻す城ヶ崎さん。

何気に失礼だ。


「…あの、どちらに……」
「いや、目の前だって。今まで話してたじゃん」
「え?えっと…私、神童くんとしか…」
「え、だから、神童だろ?」
「へ?あ、はい、いえでもあの、キャプテンさんを…」


……ここまで言われても分からないらしい。そんなに俺がキャプテンだということを認めたくないのか。

さすがの浜野もお手上げらしく、疑問符を浮かべて首を傾げていた。

確かにこうもスルーを続けられると、それも仕方ない。

…まあ、そろそろ可哀想になってきたので、事実を明かしてやろうと思う。

信じるかどうかは別だが。


「…城ヶ崎さん?」
「?な、なに?神童くん…」
「キャプテンは、俺だけど」
「……へ?…や、やだな、冗談はよしてよ!だって神童くん、まだ二年生…」
「悪いか」
「え?いや悪くないけど…」
「そういうことだ。それで、俺に何か用か?」
「…え、ほ、ほんとに?」


未だに不審気に顔を歪める彼女にキャプテンマークの存在を教えてやると、城ヶ崎さんは口を開けて固まった。



 

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