レズ少女
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「…はー。世の中にこんなに可愛い男の子がいるなんて…どうしよう私同性愛主義改めようかな…」
「単純すぎんだろ鳥頭が」
「黙れエロ沢」
いやだってずっと私の方睨んで威嚇してるけど霧野くん?だっけ可愛い。
つか今にも私に飛びかかりそうな彼をずっと宥めてくれている後ろの少年よありがとう、名前知らないけど。
あ、よく見たら後ろの子も…女の子みたいってわけじゃないけど、顔は可愛い。ついでに言うと性格も良いっぽい。
「…でもやっぱり愛せるのは女の子だけなんだよねー」
「…つか、いいのかよ。こいつらにバラして」
「あっヤベ、違う!私は!!普通に!!男の子が愛せる!!」
「お前それ墓穴掘っただけだから。なんだよその棒読み加減」
「ちくしょおおこれ以上レズだなんて噂が広まったら私街歩けないいいいい」
「声がデカイ声が。お前隠す気あんのか」
失礼な!!隠す気はありますだって隠さなきゃ女の子が話しかけてくれない!!
だが皆もう知ってるように私は馬鹿だか「南沢?途中から何私になりきってナレってんの止めんかアホンダラァ」
「いいだろ事実なんだから」
「分かってる!だがお前ほどではない!!」
「犯すぞ」
「いやああああ冗談でも止めてマジ吐き気がうぉえええ」
「とりあえずそこに正座しろ中宮」
あっヤッベそろそろお怒りだよ…この変態チビ野郎はまったくキレやすくて困るわ…
私が言えた義理じゃないけどなふはははは。
「…それで、あの…」
「んー?なんだい可愛……あれ?君…」
「え?な、なん…」
「……もしかして、神童拓人…?」
一瞬驚いたように目を見開いてから、こくんと控え目に頷く少年。
…どうして今まで気が付かなかったんだ私。
「………も、」
「ヤバッ…神童、逃げろ」
「え?」
「…よくも茜ちゃんの貞操を…!!」
「へ…?」
そんな可愛い顔して誤魔化そうとしても無駄だ!!よくも茜ちゃんを汚してくれたなぁワレ!!
「おい中宮、神童は何も…」
「黙れ低身長!!」
「地雷だっつってんだろそれ」
殴られた。
ちっくしょーせっかくかっこよくキメたのにお前ってやつぁ空気読め!!
「だってこいつ!茜ちゃんの貞操を!!」
「違えよ、つか道のど真ん中で貞操とか言うなアホ」
「じゃあ何!?茜ちゃんを弄んだの!?」
「お前ホント色々残念だよな、主に頭が」
…うるさいくたばれって言いたいところだけども、まあ少しは大人になってやらないこともない。
まあ大人だから?南沢より大人だからね身長的に?
「…じゃあ何?なんなの?どうして茜ちゃんはこの子に夢中なわけ?毒牙にかけられちゃったわけ?」
「いやどう見ても山菜の一方的な片想い…っつーかただのファンなだけだろ」
「なんだじゃあ話は別だ!!茜ちゃんを幸せにするのは私だ神童くん!!君には負けない!!」
「え…あ、はい?」
「うわああちくしょう余裕ってか!!自分はちょっと茜ちゃんに好かれてるから余裕ってか!!」
「すみません何の話ですか」
「……相手にするな神童。こんな頭のネジが何本もブッ飛んだようなやつに何言ったって無駄だ」
「何本もは余計だうざみさわ!!仮にブッ飛んでたとしても一本くらいだボケが!!」
「そうか、ならその脳天かち割ってもう一本くらい飛ばしてやろうじゃねえか」
「暴力反対いいいいい!!」
ああもう疲れる!!こいつの相手も神童くんとの張り合いも疲れる!!霧野くんに殺されかけた後だから余計に疲れが腰にくる!!
そんなことを思いながら防御体制をとると、突然耳に響いた笑い声。
見ると、神童くんと霧野くんが盛大に吹き出している。つか、腹を抱えて笑ってる。
「…え、何?」
「み、南沢さんや神童相手にここまで馬鹿できる人、は、初めて見た…っ」
「待ちぃや霧野くん君喧嘩売ってんの?」
誰が馬鹿だ誰が。
…だが彼女…おっと彼はただ思ったことを言っただけらしい。それでは反論ができないではないか。
「無理っ、…苦しっ」
「そこまで笑わなくてもいいんじゃないかな!?失礼だよ君たち!?」
なんなんだ最近の中学二年生は笑い上戸なのか。うちのクラスじゃこんなの日常だよ。
「…おいお前ら」
「す、すみません南沢さん…っ、も、可笑しくて…っ」
「…はあっ、笑ったー」
「これでもかってくらいにね!」
失礼極まりない後輩共だな!!可愛いからって甘く見てたわ!!
「あの、先輩…名前、なんていうんですか?」
「ん?私?悠希だけど」
「悠希さん、ですね。覚えておきます!それじゃ南沢さん、また部活で!」
「……ああ」
…なんだ私霧野くんに許してもらえたのか。
手を振ってきた彼らに私も手を振り返して、そのまま珍しく静かになっていた南沢とも別れた。