Short Stories

□大人になる方法
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「鷹村!鷹村はどこじゃ!?」


  練習開始時間はもうとっくに過ぎているというのに、いくら電話をかけても通じない、と会長は青筋たてて怒りをあらわにしている。しかし同時に、鷹村が練習をサボるなんて珍しいことだから、怒りながらも何かあったのではないかと、少し心配になってもいる。

 
「誰か、様子を見に行ってくれんか!」

 
 会長の呼びかけに答える者はいない。鷹村の家に様子を見に行って、なにやら面倒な事に巻き込まれるのが嫌なのだ。


「宮田はおるか!?」


 鷹村に対して強く出られる人物の1人、ジムの古株で現在中学生の宮田一郎。彼なら、鷹村の様子を見に行き、連れてくるという任務を、果たしてくれそうなのだが・・・
会長の呼びかけに対し、ジム内の人間は無言を保つ。


「宮田ならロードワーク行ってますよ。」


宮田の幼なじみである奈々が答えた。


「ぬ・・・そうか。・・ならばキサマが行け。」
「えっ・・・!?」


 みんなが無言を保っていたのは、口を出す事によって自分に白羽の矢を向けられることをおそれての事だった。それを奈々はバカ正直に答えてしまったのだった。


「いいから様子を見てこんかい!!」
「はいっ!!」



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「まいったなぁ〜。」


 おもわず溜息が出る。鷹村と言えば、ジム一番の理不尽大王。もし、昼寝でもしていて、起こしたモンなら、どんなひどい目に遭わされるか・・・!!ドラゴンスリーパーか、ジャーマンスープレックスか・・・。頭に暗い未来を想像しながら、駆け足も自然と鈍くなってくる。

 太田荘、と書かれたアパート。とうとう、来てしまった。どうか、自らに災いが降りかかりません様に、と祈りながら、奈々は鷹村の家のドアを開けようとした。その時、なにやら声が聞こえた。


「だ、ダメっ・・・・あぁっ!!」
「ん〜?何がダメだって・・・?」
「・・は・・ぁ・・!」



・・・・!!
この声、何?

 中学生の奈々には、どうも聞き慣れない、とぎれとぎれの苦しそうな声。だが、全く鈍感で疎いワケでもない。これは・・・


「ヤってやがる・・・・バカ鷹村!!」


 玄関のドアに、背をあずけて思わず座り込んでしまった。断続的に聞こえてくる、悩ましい声。部外者なのに、聞いていてどんどん顔が赤くなってくる。


「・・・なんか、ムカつく!!」


 自分に課された任務は、鷹村の様子を見てくること。そして、このバカ大魔王を、ジムに引っ張って行かなければならない。 奈々は思い切って、ドアを叩いた。


「ちょっと!鷹村さん!練習どうしたんですかー!?」


 ドンドンドン!と借金の取り立てさながらに叩く。ナカナカでてこないので、奈々は更に声を荒げた。


「おーい!!鷹村さんってばー!会長カンカンだよー!!」
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