Short Stories

□律儀な君はシンデレラ
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「なんで・・・分かったの?」
「ん?」
「私が今、ここにいるって」


たくましい腕の感触を味わいながら、奈々もそっと両腕を背中に回す。


「なんとなく」
「宮田くんってエスパー?」
「かもな」


そういって笑う吐息が、しずかに耳元をかすめる。


「あ!」


奈々はそう叫ぶと、突然宮田から身体を離し、腕時計を確認した。
時間は11時59分を指している。


「誕生日、おめでとう!」


持っていた紙袋を宮田の眼前に差し出し、奈々は深夜には大きすぎる声で言った。


今度は逆に、宮田が目をぱちぱちと見開きして固まっている。
それからしばらくして、宮田は思わず吹き出してしまった。


「な、なんで笑うのよぉ!?」
「いや・・・なんつーか・・・」


くくく、と背中を曲げて笑う宮田。
奈々は自分が何か変な事をしたのではないかと、顔がだんだん赤くなってきた。

宮田は差し出された紙袋を受け取ると、そのまま再び奈々を抱き寄せた。



「律儀だよな、ホントに」


抱き寄せたまま、まだ笑いが止まらないらしい。
不規則な振動が密着した身体から伝わって来る。


「だって・・・絶対当日にお祝いしたかったんだもん」
「ギリギリだけどな」
「もぉ。意地悪だなぁ」


残暑というにはまだ暑すぎる夏の日。
重なった唇が、身体の火照りをいっそう加速させる。


「奈々」
「ん?」
「ありがとな」


再びきつく抱きしめて、宮田が呟く。
Tシャツから覗く、綺麗な鎖骨に心が逸って止まない。


「本当に本当に、誕生日おめでとう」
「もう過ぎたけど」
「もぉー。まだ2分くらいしか過ぎてないじゃん!」


宮田はまた笑って、奈々の頭をゆっくりと撫でた。


END



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宮田くん、誕生日おめでとう。
幸薄い君に、少しでも幸せがありますように(笑)。

2011.8.27 高杉R26号
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