長編「TENDERNESS」

□33.手と手
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何が起こっているのか分からなかった。

勘違いを起こしかけて
それを否定して、
傷つかないように心を守って

それでも勝手に傷ついて
勇気とか真心なんて言いながら
相手の心ひとつ、分かってあげられない。

そんな私をどうして
彼は抱きしめているんだろう。



33.手と手





「オレから言うから」


宮田はそういって、しばらく無言で奈々を抱きしめていた。
外はすっかり寒くなったというのに、宮田の身体は驚くほど温かかった。
奈々は、顔の火照りが一層増していくのが分かった。


「バカみてぇだろうが、本当に・・・」
「な、何よ・・・」
「勝手に思いこんで、体よくカッコつけてよ・・・」


それから宮田は、更に力を込めて抱きしめた。
奈々の耳元で、小さく呟く。


「好きだ」


決して離さないとばかりに、宮田は回した両腕に力を込めて続けた。


「木村さんなんかに渡さねぇよ」


奈々は自分の耳を疑った。
夢を見ているのではないかとすら思った。
その度に、宮田がギュッと抱きしめる力を強める。
そうしてようやく、これが現実なんだと理解すると、自然と涙が溢れた。


「・・・好きじゃないって・・言ったじゃん・・・」


奈々もまた、自分の両腕を宮田の背中に回して、しがみつくようにギュッと力を込めた。
涙声で憎まれ口を叩く奈々を、宮田は愛しく思いながら言葉を返す。


「嘘ついて悪かった」
「なんで・・・嘘ついたのよぉ・・・」
「キスしたあと、露骨に避けたじゃねぇか。それ以上困らせたくなかったんだよ」
「だってぇ・・・」

涙が止まらず、言葉にならない。
嗚咽がおさまるまで少し息を整える。
その間、宮田はずっと背中をポンポンと優しく叩いてくれていた。


「だって、なんだよ?」
「ふ・・不意打ちだったもん・・・」
「油断した方が悪いんだよ」

宮田が例の如く意地悪な口調で言う。


「・・・覚えてなさいよぉ・・バカぁ・・・」


泣きながらも負けじと憎まれ口を叩く奈々を、宮田はずっと抱きしめていた。
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