長編「TENDERNESS」

□31.作戦決行
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目を合わせない日々は続いていたけれど
私は毎日、あいつを見ていた。

たっちゃんの言うことは大げさに思えるけど
ひょっとしたら宮田も、私のことを見てくれていたのだろうか?

だとしたらどうして?
宮田は私を好きじゃないって言ったのに。

友達に冷たくした罪悪感?
それとも、宮田は嘘をついたの?
本当は、私を・・・?

思い上がった期待感に、頭が支配される。

ならばどうして、嘘をついたの?
私がたっちゃんのことを好きだったから?

でもそんなことで諦めるような男には思えない。
だって宮田は「勝ち目のない相手にも立ち向かう」って言ってたもん。

何度考えても結論は出ない。
じゃあ、私はどうしたい?

答えは分かっているのに、動けない。



31.作戦決行




「なんか複雑な話になってんだな」


青木が自分のことのように深い溜息をついて呟いた。
ベッドに寝っ転がっていた木村は、読んでいたマガジンをパタンと閉じると、上体を起こしてあぐらをかいた。


「前に、お前から聞いたときはさ」


青木も読んでいた漫画を閉じて言う。


「お互い好き合ってるって話だったじゃん?」
「ああ」
「だからオレ、すぐにくっつくと思ったんだよな」
「オレもそう思ってたよ」
「・・・つーかさぁ!!」


青木が少し大声で、呆れたように言うと、木村は「何?」といぶかしげな顔をして答えた。


「奈々がお前を好きだったってのも初耳だっつーの」
「・・別に、言う必要ないだろ」


照れた木村がぶっきらぼうに呟くと、青木は床に寝そべり


「冷てぇなぁ、幼なじみよぅ」
「でもムリだろ?奈々だぜ?妹にしか思えないだろ?」
「まぁ・・・オレたちは兄妹みたいなところあるからなぁ」


とある休日の午後。
彼女の居ない二人は、よくこうやって互いの家に集っては、漫画を読みながらくだらない話を繰り広げていた。
二人がヤンキーになる前は、この場に奈々も加わって3人で遊ぶことも多かったが、最近はめっきり姿を見せない。


「んで、どうすんだろうなあの二人」


青木が天井を眺めながら小さく呟く。


「もどかしいよなぁ」
「上手くいってほしいけどなぁ」


それから二人とも、言葉に詰まってただ天井を眺めていた。
すると青木が突然、ものすごい勢いで起き上がり


「ダメだ」
「・・・何がだよ?」

木村は相変わらず、惚けっと天井を見ながら冷静に聞き返した。


「あいつらが上手く行くってことはさ」
「ああ」
「宮田に彼女が出来るってことじゃん!!うっわ!!腹立つ!!」
「そう言われると確かにな・・・」
「オレらに彼女が居なくて宮田には居るんだぜ?ボクシングでも負け、男としても負けんのかよ!!許せねぇ!!・・あ〜でも、奈々には幸せになってほしいし・・・チクショウ・・・どうすりゃいいんだぁあああ!!」


青木は頭を抱えながら床をのたうち回った。
一方で平然とした顔で取り乱さずにいる木村の元へ這いずり、身体を揺すりながら


「奈々が宮田にヤられんだぞぉお!?考えたくねぇよな!!」
「〜〜〜やめろよ、想像したくねぇって」
「大事な妹の身体に、宮田のチン・・」
「だから止めろっての!!想像させんなバカ野郎!!」


互いにつかみ合いながら、小規模な喧嘩に発展していく。
ひとしきり大声を出して騒いだ後、ふう、と虚しい溜息を吐いて、木村が青木から手を離した。


「まぁ、オレらに出来ること、やってやろうぜ」
「・・まぁそうだな・・」


青木は観念したようにうなだれた。


「でもどーやるんだよ?」
「んー・・・」


木村はしばし考えて、何か妙案を思いついたらしい、指をパチンと慣らして口角を上げた。


「オレに任せとけっての」
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