長編「TENDERNESS」

□26.最低
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宮田は今でも、私がたっちゃんの事を好きだと思っているんだろう。
だから、これからも話を聞いてやると言ってくれた。
そして宮田は、私のことは好きじゃないと言った。


誤解されたままなのは嫌だけど
分かりきっている答えを聞きに行くのも嫌で

私はただただ
自分が傷つかないための方法ばかり考えている。

だって、もう
好きな人に受け入れてもらえないなんて、
そんな現実は、しばらく見たくないもの。





「ごめん」




放課後の玄関先で、宮田は一言そう呟くと、くるりと背を向けて歩き始めた。
二、三歩ほど歩みを進めたところで、後ろから再度声を掛けられる。


「宮田くんって、高杉さんと別れたんでしょ?なのにどうしてダメなの?」


意外な一言に、宮田の足が止まった。
前にも似たようなことを言われたような気がする。
少し苛立ちながらも、律儀に振り返って答えた。


「そもそも付き合ってない」
「嘘でしょ?」
「嘘付いてどうするんだよ」


男女二人が仲良くしていればすぐに惚れた腫れたに結びつける。
その短絡的な思考回路をどうにかしてほしいものだと宮田は呆れた。


「でも高杉さんのこと好きなんでしょ?」


随分と直接的な質問に、宮田は少し面食らった。
自分に告白してきたからといって、何も自分が正直に心の内をさらけ出す必要などはない。


「アンタに関係ない」
「いつも見てるじゃない、高杉さんのこと」
「知るかよ」
「高杉さんのこと好きなら、諦めるから」


しつこい質問に宮田の苛立ちは頂点に達した。
無言のまま再びくるりと背を向け、立ち去ろうとしたときだった。


「否定しないってことは、好きだってことね」



宮田は振り返らず、返事もしなかった。



翌日の休み時間ことだった。
奈々は、なにやら女子がコソコソと自分を見ながら話をしているような気がして、少し落ち着かない心地を覚えた。
普段関わることのない他のクラスの生徒までも、自分を見ているような気がした。


昼休みに、例の友人らと一緒に弁当を広げているときだった。
友人のうちの1人が、ボソリと呟く。


「奈々、あんた噂になってるよ」


そう言われて奈々は内心そのことに気付いては居たが、取り立てて自然な風を装って、ご飯を食べながら「何が?」と脳天気に答えた。
しかしその答えは、奈々の想像を遙かに超える内容であった。


「宮田くんって、奈々のこと好きなんだって」


その言葉に思わず、食べていたご飯が鼻から飛び出しそうなほどの衝撃を受けた。
またしてもむせ返りながら、友人がくれたお茶をひとすすりして聞く。


「はぁ?なにそれ?」
「昨日、3組の子が宮田に告ったらしいんだけどさー」
「あ、私も聞いたそれ!」


もう1人の友人も思い出したように口を挟んだ。


「玉砕してから宮田の好きな人聞いたら、奈々だったってさ」


そんな事を聞いて、自分がいまどういう顔をしているのか、奈々は全く分からなかった。
また、宮田が告白されたからといって自分の好きな人の名前を軽々しく出すとは思えない。
全くのデマであるとわかって居ながらも、虚しい期待感に顔が赤くなっていく。


「・・・何言ってんのアイツ」


奈々は興味のないフリをしながら、弁当を食べることだけに専念した。
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