お題+企画

□失望
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   強い日差しが照り付ける暑い夏の日のこと。
   私と謙也は毎日の日課になっている放課後のお菓子を食べに通学路を歩く。
   話す内容は、毎日起こった出来事など。


   「謙也、今日なに食べる?」

   「んー・・・アイスでええんとちゃう?」

   「それいいね、行こうか」


   私と謙也は幼馴染だ。
   幼馴染って言っても、私は東京から引っ越してきて、
   引越し先で謙也の家とお隣なってー・・・幼馴染になりましたー・・・みたいな。
   でも仲はすごくいいと思う。決して自惚れではない。多分。


   「私ストロベリーで!」

   「俺はバニラ」


   2人でアイスを頼んで、公園のベンチに座った。
   1口食べれば一瞬にして冷える体。
   それと同時に少し緩む私の涙腺。


   「謙也、花を見に行こう」

   「は?」


   私はアイスを持ちながら謙也の手を引く。
   謙也はいきなりなんだ・・・と驚いただろう。
   でもね、今日じゃなきゃいけないんだ。


   「いきなりどうしたん・・・っ」

   「別に、見て欲しい花があっただけ」

   「・・・・・・・」


   その後から会話はしてない。
   私達は無言で歩いた。







   「着いたよ」

   「・・・・これ」

   「アスターって花」


   一面に広がるアスターの花。
   今日、あなたと見たかった。この花を。この花だけを。


   「・・・綺麗でしょ?」

   「おん・・・ありがとな」


   そう言って謙也は私の頭を撫でた。
   駄目だ、涙腺が緩みそう。
   でも、泣きたくない、泣けない。泣いちゃ駄目だ。


   「謙也、また明日」

   「・・・・・」


   その言葉に謙也はニコっと薄く笑って、また花に視線を戻した。
   私は謙也の手を握って、涙を流す。
   謙也はそんな私を抱きしめて、


   「またな」


   って呟いて、私に背中を向けて去っていった。
   もう、会えないことなんて分かってるのに、またねなんて馬鹿馬鹿しい。




   さよならなんて言わないよ。
   だって、アスターの花言葉は「さようなら」。
   私からは言えないから、気づいてくれたことを信じて私は目を瞑った。



  「・・・・・・ありがとう、」



あなたの去っていく後ろ姿なんて見たくもなかったよ。

だけど私はまだ、あなたを信じてるから、ずっと待っていたいと思います。









失望


(あなたのことを、忘れたくはない)









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