☆Short story☆

□Virgin Night
2ページ/7ページ



「Trick or Treat!!」


「うわぁ!!」



ノックもせず、勢い良く部屋の扉が開いた。


聞き慣れた声が、部屋に飛び込んできた。




「な、なんですかユチョンひょん…ビックリしたじゃないですか……」


ぼんやりと考え事をしていたチャンミンは、いきなりの親友の訪問に驚いてその体を起こす。



「あはは。悪ぃ悪ぃ」

チャンミンがそちらを見れば、見慣れた親友、ユチョンが、見慣れぬ格好で楽しげに立っている。

黒いマントを羽織ったその格好は、まるで何かの仮装パーティーにでも参加するようで。







チャンミンはしばらく瞬きを繰り返すと、やっと口を開いた。


「…で、何の悪ふざけですか?」


「ちぇ。ノリが悪いなぁ。ほら、今日はハロウィンだぜ?」

部屋に上がり込んだユチョンは、口を尖らせてそう言う。



もうそんな季節か。


ふとそう思ったチャンミンはカレンダーを見上げた。



クリスマスやバレンタインほどメジャーではない。

だいたい、そんなイベントは冬に固まっている。



なんとなく人恋しい秋。



そんな人の心を埋めるかのように、存在するイベント。





「どうせチャンミンは忘れてると思ったからさ、だから敢えてこんな格好してきたんだ」


そう言ってユチョンはマントを広げて見せた。


「そりゃわざわざありがとう」


チャンミンは立ち上がり、慣れた手付きで紅茶を出す。


ユチョンも手を伸ばし、いつものように砂糖を入れ、それを飲み干した。





二人の出会いは何年も前のこと。

昔から馬が合い、気付いたら同じグループで活動をしていた。

以前から、お互いに友人以上の好意を抱いていて。

お互いを想っていて。


恋人…と言ってもおかしくはない関係が続いていた。

ユチョンが何度かチャンミンを誘ってはみるが、なかなか踏みきれない状態で。


そのまま。

いくつもの季節を、通り越してきた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ