夏のミステリー企画

□覇王に愛されるということ
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先日、友人の紅玉に誘われて占い師にみてもらったところ「長生きできないわね」と言われた。


理由を聞くと

「あなたに憑いてるその人は、悪霊なんてものじゃないわ。神に近いから、まず祓えないし、どこへ行っても障ることを恐れて何もできないのよ・・・」

「あなた、良い友人達に恵まれているのね。お友達があなたを思う気持ちが、あなたを繋ぎ止めて守ってる・・・・でも、もってあと数年なの」


どうしてそこまで断言できる?


「あなた、過去に足を怪我して不自由なことになってない?」

確かに。

私は数年前に事故に遭い、歩行や生活には問題ないが、長時間は走れなくなってしまった。


「それは持って行かれたのよ。でも命だけは、あなたを守る人達に救われた。でも、次は全てとる、と言っているの・・・・・ごめんね、こんなことばかり言って」

占い師はそう言って、私から料金を取らなかった。


自分が余命数年?

そんなこと急に言われても信じられないし、なにより実感がない。


その占い師は「あたる」と評判で、ずっと占ってもらいたがっていた紅玉が予約までしてみてもらいに来たのだ。

割と高額な見料も「残りの人生に使いなさい」と受け取られなかった。



真っ青な顔になった紅玉は、自分が占ってもらうことなどとうに忘れて「お祓いに行きましょうよ!」「きっと何か手があるわ!」「大丈夫よぉ!!」と今にも泣きだしてしまいそうだ。

恋占いをしてもらうのだとはしゃいでいた行きと、半泣きの帰りのこの落差をどうしようか。





次の日、学校で友人達に占いの結果を話した。

「信じてはないけど・・・・」と言いつつ。


彼らは「そんなん信じる必要ねぇって!!」「私も、そんなことは信じません」などと私を励ましてくれた。



後日、白龍が探しだしたある有名神社にお祓いの相談をした。


私はただ「お祓いを頼みたい」とだけ言って詳しいことは何も告げていないのに、白い髪とそばかすが印象的な神主は私を一目見るなり

「神様にはできる限り障りたくないんです。こちらの命も危ないですから」と言った。


「すいません、どんな神様が憑いてるんですか?」

「・・・・・・異国の神様のようです。あなたをしっかりと抱えているようですね。」



回避方法無し宣言をされ、詰め寄ろうとしていたアリババとモルジアナも絶句する中、私は気になった。


「どうして私なんでしょう?」

「人と同じですよ。好みなんです。昔から、神様に愛されると長生きできないと言いますね。あれと一緒ですよ」


理不尽な理由。

しかし神話を見る限り、神とはそんなものかもしれない。と妙に納得した。




そんなことがあってからしばらく。

どこかピリピリしていた友人たちは落ち着いたが、私は最近、ふとしたときに足が動かなくなったり、動きが鈍ることがある。


そして、もともと夢を見てもほとんど覚えていないタイプなのに、しっかりと内容を記憶している夢を見るようになった。



どこか、植物の多い---森の中

私は木陰で微睡んでいる。

温暖な気候で、夢の中なのにぽかぽかと温かく、すごく居心地が良い。


ずっとここにいたいと思う。



「ずっとここにいてもいいんだよ」



いつも傍にいるのは、1人の男性。

光の加減によって紫に艶めく長い黒髪で、豪華な金の装飾品を身にまとう美丈夫。


彼は「朱夏」と私の名前を呼び、うっとりと微笑む。




「すぐにでも君を連れて行きたいよ、朱夏」




いつかこのまま、目を覚まさなくなるのだろうか。












2014.7.29
神様:シンドバッド
友人:アリババ、モルジアナ、紅玉、白龍
神主:ジャーファル
占い師:ヤムライハ
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