君の瞳に映る空

□シュガーコーティング・レディ
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「ハンジ、どうしよう…」



そう言って、私に潤んだ黒曜石の瞳を向ける愛しい人


陥落しそうな理性を押さえつけ、どうにかこうにか絞り出した「どうしたの?」という声は震えていた。







最近ギンガの周りでは、彼女にとっては辛い出来事ばかりが続いた。



壁外調査で部下がギンガを庇って死亡。

同じ日に、班員をあと一歩のところで助けられず、巨人の餌に。

民衆の調査兵団に対する、掌を返したような態度。

それに、憲兵団からの無茶な要請。



この華奢な肩に背負うには、いささか重すぎることばかりだ。


余裕の無くした心はいっぱいいっぱいになって、何もかも投げ出したくなって、プッツンしてしまった結果


あろうことかギンガは・・・



「リヴァイを、拒絶、した…!?」



伸ばされた手をパンッと音を立てて振りはらい、「来ないで」と短く吐き捨てて来たらしい。



訳もなくイラついた。

それは間違いなく、ただの八つ当たりだ。



「それは・・・・早いとこ謝ってきなよ」





エレン君に。





直属の上司の修羅場に遭遇したのみならず
その場に、しかもリヴァイと共に取り残されたエレン君に心底同情する。


今頃リヴァイは殺気MAXで荒れて・・・・・・・エレン君、生きてるだろうか。




「でも----ハンジぃ…」

「・・・・ああ、もうッ!!」


滅多にない甘えた声と、途方に暮れた仔犬のような表情に、たまらずぎゅうううっと抱きしめた。



リヴァイへの八つ当たり。

それは信頼と甘えの裏返しだ。


羨ましいとも思うけど、もしも私がギンガにそんな事をされたら・・・衝動的に自殺してしまいそうだ。





+++++





「お願いします。兵長をなんとかしてください」




足元では、ぼろぼろのエレン君が見事な土下座を見せている。



「エレン君の能力でも回復しない怪我って一体…」



戦慄した。

アイツ、今どんだけ機嫌が悪いの。



「えー…リヴァイの様子は?」


「最初、ギンガさんが部屋を出てからしばらくはその場で硬直してたんですけど、次にガタガタ震えだして、その後ぶつぶつ呟いて殺気を撒き散らし始めて、急に笑いだしたと思ったら、そのまま掃除を始めました」


「「・・・・・」」



兵長は思った以上に重傷で、事態は思いのほか深刻だった。


「い、今は?」

「何かに取り憑かれたように掃除をしています」

「それ多分、掃除をして心を落ち着かせてるんだよ」



そして、縋るような眼差しでエレンに見つめられたギンガは、重々しく頷いて・・・


「今行くのは危険だ・・・もうちょっと放っておこう」

「お願いします助けてください!!」



全てを放棄した。



というかエレン君も巨人化すれば逃げられただろうに。

調教の賜物か、「リヴァイには逆らうべからず」というのが骨の髄まで浸み渡っているらしい。


「でも確かに、被害が拡大する前に鎮めた方がいいよね…」

「兵長は荒ぶる神か何かですか」



そんなもんじゃないだろう。


神様なら三度まで許してくれるらしいが、リヴァイは1回も…否、0.5回も許さない。



「わかった…。元はと言えば全部私のせいなんだから…責任もってなんとかする。ライオネルも、自分のケツは自分で拭けって言ってたし」

「ギンガはたまに、ものすごく漢らしい発言をするよね」


「でも今夜はハンジの部屋で寝かせてお願い匿ってそうじゃないと腹上死絶対無理」



見上げてくる目はマジだった。




2013/5/18

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