君の瞳に映る空

□夢で逢いましょう
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夢を見ながら、これが夢だとわかることがある。




そんな時に早く目が覚めたいと思うか、このまま眠っていたいと思うかはその夢によるだろう。



だがその時の私はまだ夢の中にいたかったにも関わらず、強制的に覚醒を促された。






「-------ぃ、おいッ!!」

「…、ん」

「!!ギンガ、おい聞こえてるか」

「リ、ヴ…、…?」


頭にはモヤがかかったように、思考が生まれない。


とりあえず、顔が近い。てか顔が怖い。と言おうとしたのだが
喉が張り付いたように声が出なかった。

不思議に思い身を起こそうとすれば、ガクンと力の抜ける自分の身体。



「やっと起きやがって・・・・・・・・畜生」

「?」


目元を掌で覆ったリヴァイが深いため息と共にベッドに肘をつき、そのまま動かなくなってしまった。


もしや泣いているのではと錯覚してしまいそうなほど、何かに耐える様に身体を強張らせる彼。


「ね。リヴぁ、ぃ…なに、」

「…そのまま黙って寝てろ。てめぇは丸3日もくたばってたんだ」


そうなのか。と思うと同時に蘇る記憶。


それは、空恐ろしい笑顔をした奇行種の巨人を最後に途切れていた。



自分の状況がわかったならば次に気になるのは、その後の結果----死傷者についてだ。

しかし今それをリヴァイに問うた所ですんなりと教えてくれないだろうことは、今までの経験上十分に承知していた。



「まだ麻酔が効いてるんだろ。動けねぇはずだ」

「ん」


差し出された水が、喉を潤していく。

乾いた砂漠に水が滲み渡るように、水分を迎えた身体が喜んでいるのがわかった。



「ありがと」

「ああ」

「今、調査兵団はどうなってるの?」

「…馬鹿な事気にしてないで寝てろ」

「逆に気になって眠れない。私の班員は?死傷者の数は?」

「……」

「前衛部隊から救援信号が出てたでしょ?どうなったの?」

「……」


「次の、壁外調査の日程は?」


その言葉に、無言を貫いていたリヴァイは椅子を蹴り倒して立ち上がり、横たわったままの私の胸倉を強引に掴んだ。



「まさか、外に行くなんて言わねぇだろうな」


「行くよ。リヴァイが止めても、私には自分の意志-----」



ドゴォッ!!



「すいませんでした」

「・・・・・」


一蹴りで木っ端微塵にされた哀れな椅子を前に、私は反論というものを捨てた。


やべぇ、地雷だった。



「どうやら自分の立場がわかってないみたいだな」

「いえ、十分承知しております」


「いや、わかってねぇ」



俺直々に躾直してやる。



完全に目の据わったリヴァイ兵長の名言が飛び出し、私が恐怖に顔を引きつらせたところで
部屋のドアが静かに開いた。



「リヴァイ、ギンガは…って何してんの!?」

「ハンジ…」

「邪魔すんじゃねぇ、出てけ」

「そんなわけにいかないよ!!何で怪我人の胸倉掴んで押し倒してるのさ!?というかギンガが起きたんなら教えてよ!!」


眼鏡の奥の瞳に心配と安堵を存分に含みながらハンジが私に取り縋ると
リヴァイはちっ、と舌打ちを1つして離れていく。


「ギンガ、ああギンガ……とにかく目が覚めて良かった!!」

「うん。ごめんねハンジ、心配掛けて」


顔から出すもの全部出して抱きついてくるハンジに対し
潔癖症の兵士長は「汚ぇ」と遠巻きに、まるで汚らわしいものを見るかのような形相だ。



「ずっと起きないから、本当にさ…」

「ごめんって。えーっとね、人語を話すネズミの国に行ってたの。」






「「・・・・・・・は?」」


「そこ、夢の国なんだよ。そのネズミにはガールフレンドのネズミもいてペットに犬を飼っていて、あ!魔法使いの弟子なんだっけ」



「リヴァイ…どうしよう」

「医者を呼べ早く」


あんなにも青褪めた兵士長殿の顔は初めて見た。

後日ハンジは部下にそう語っていた。









「リヴァイ聞いて!!空飛ぶあんぱんの顔があんぱんで、お腹がすいたら顔のあんぱんをくれた!!」

「ッ誰か早く医者呼んで来い医者ぁ!!」

「また飛んだんですか分隊長ッ!!」

「怪我の後遺症か!?」



以来、スタイリッシュな夢を見ては嬉しそうに報告するようになったギンガであるが
残念なことに理解者はまだ1人として現れていない。





2013.5.1

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