アマガミ!!
□生死問わず
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正十字学園高等部3年・東宮リオ
彼女は今、未曾有の危機に瀕していた。
【DEAD OR ALIVE】
手足は小刻みに震え、冷や汗が背を伝う。
パクパク、と金魚のように口を開閉すれどそこから言葉は出ず
カラカラに渇いた喉がヒューと木枯らしのような音を立てた。
場所は正十字学園、理事長室
白とピンクに支配された、目と心に痛い部屋である。
この部屋の主---メフィスト・フェレス卿に呼び出しを受けた彼女
しかし予定の時間よりも早く来てしまったせいか、呼び出した当本人の姿は此処に無い。
そして、理事長室でリオは1人
ある一点から視線を離さないまま、既に10分が経過しようとしていた。
その時である
ガチャ
「!!」
全く動きのなかった室内に響くドアの音
そして舞い込む新しい風
「来たぜーメフィストー」
「失礼します、フェレス卿」
「動かないで!!」
「「!?」」
ドアの向こうから現れたのは、こちらも呼び出しに応じ理事長室へと来た燐と雪男の奥村兄弟
しかしリオは入ってきた2人になど目もくれず、視線はあるモノに向けたまま
「先輩?」
「どうなさったんですか?」
「・・・・・」
切羽詰った様子のリオ
只ならぬその様子に、2人は彼女の視線の先を見て・・・・
「ゴ--「悪魔が出たぁあああ!!」---兄さん!?」
その正体を言おうとした弟を遮り、兄が絶叫した。
ぎゃぁああああ!!と尾の引くような叫び声を上げ、その場で右往左往する燐。
「刺激しないで!!静かにして!!」というリオの嘆願にも落ち着かず、既に涙目である。
「どうすんだよ!?出たぞ、あの悪魔が出たんだぞどうすんだよ!!」
喚く兄の様子に「悪魔はお前だろ」と弟は心の中でつっこんだ
この場で今一番冷静な頼れる男---雪男はふぅ、と溜息を吐くと
リオと燐、2人を恐怖のドン底に陥れている1匹の虫を正面から見つめた。
コレはアレだ。
何故か理由はわからないが、誰しもがその存在を恐怖し戦慄する家庭用害虫----イニシャルGだ。
女性であるリオがGを嫌悪するのは勿論のこと
実は燐も、この害虫が大の苦手である。
料理を趣味とする燐
片付けは苦手な兄だが、この害虫の発生を防ぐ為、修道院にいた頃から台所の掃除だけはマメにしていた。
雪男がそんな事を思い出している時、次の登場人物がステージ上に姿を現した。
「おや、皆さん既に御出ででしたか。遅れまして・・・」
「静かに!!」
「動くんじゃねぇ!!」
「!?」
部屋に入るなりリオと燐に怒鳴り掛けられたのは、他でもないこの部屋の主
メフィスト・フェレスが、既に彼を現していると言っても言い白のピエロ服で現れた。
「一体何事です?」
何の遊びか、と呆れるように問いかけたメフィストに
2人はある一点を無言で指差す。
その指先を辿った彼は、ピシッと身体の動きを停止
次の瞬間、電流が走ったかのようにビリリと全身を痙攣させた
「フェ---「悪魔が出たぁあああ!!」---貴方もですか!!」
狂乱する上司の様子に「だから悪魔はお前だよ」と雪男は再度つっこむ。
どいつもこいつも・・・!!
奥村雪男(15)の苦労は絶えない
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