アマガミ!!

□生死問わず
1ページ/4ページ






正十字学園高等部3年・東宮リオ


彼女は今、未曾有の危機に瀕していた。




【DEAD OR ALIVE】




手足は小刻みに震え、冷や汗が背を伝う。

パクパク、と金魚のように口を開閉すれどそこから言葉は出ず
カラカラに渇いた喉がヒューと木枯らしのような音を立てた。


場所は正十字学園、理事長室

白とピンクに支配された、目と心に痛い部屋である。


この部屋の主---メフィスト・フェレス卿に呼び出しを受けた彼女

しかし予定の時間よりも早く来てしまったせいか、呼び出した当本人の姿は此処に無い。



そして、理事長室でリオは1人


ある一点から視線を離さないまま、既に10分が経過しようとしていた。


その時である




ガチャ




「!!」



全く動きのなかった室内に響くドアの音

そして舞い込む新しい風


「来たぜーメフィストー」

「失礼します、フェレス卿」

「動かないで!!」

「「!?」」


ドアの向こうから現れたのは、こちらも呼び出しに応じ理事長室へと来た燐と雪男の奥村兄弟

しかしリオは入ってきた2人になど目もくれず、視線はあるモノに向けたまま


「先輩?」

「どうなさったんですか?」

「・・・・・」


切羽詰った様子のリオ

只ならぬその様子に、2人は彼女の視線の先を見て・・・・



「ゴ--「悪魔が出たぁあああ!!」---兄さん!?」



その正体を言おうとした弟を遮り、兄が絶叫した。


ぎゃぁああああ!!と尾の引くような叫び声を上げ、その場で右往左往する燐。

「刺激しないで!!静かにして!!」というリオの嘆願にも落ち着かず、既に涙目である。


「どうすんだよ!?出たぞ、あの悪魔が出たんだぞどうすんだよ!!」


喚く兄の様子に「悪魔はお前だろ」と弟は心の中でつっこんだ



この場で今一番冷静な頼れる男---雪男はふぅ、と溜息を吐くと
リオと燐、2人を恐怖のドン底に陥れている1匹の虫を正面から見つめた。


コレはアレだ。

何故か理由はわからないが、誰しもがその存在を恐怖し戦慄する家庭用害虫----イニシャルGだ。



女性であるリオがGを嫌悪するのは勿論のこと
実は燐も、この害虫が大の苦手である。


料理を趣味とする燐

片付けは苦手な兄だが、この害虫の発生を防ぐ為、修道院にいた頃から台所の掃除だけはマメにしていた。


雪男がそんな事を思い出している時、次の登場人物がステージ上に姿を現した。



「おや、皆さん既に御出ででしたか。遅れまして・・・」

「静かに!!」
「動くんじゃねぇ!!」

「!?」


部屋に入るなりリオと燐に怒鳴り掛けられたのは、他でもないこの部屋の主

メフィスト・フェレスが、既に彼を現していると言っても言い白のピエロ服で現れた。


「一体何事です?」


何の遊びか、と呆れるように問いかけたメフィストに
2人はある一点を無言で指差す。


その指先を辿った彼は、ピシッと身体の動きを停止

次の瞬間、電流が走ったかのようにビリリと全身を痙攣させた



「フェ---「悪魔が出たぁあああ!!」---貴方もですか!!」


狂乱する上司の様子に「だから悪魔はお前だよ」と雪男は再度つっこむ。


どいつもこいつも・・・!!


奥村雪男(15)の苦労は絶えない





.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ