アマガミ!!

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「合格です☆」


ピエロは白のシルクハットから手品のように小さな旗と紙くずを撒き散らした。


Congratulation!!と書かれた旗がポフン!!と音を立てて飛び出す。



「マネキンに潜んでいた悪魔は霊(ゴースト)の一種で、まぁ世間一般に‘生霊’と言われるに近い。試験では東宮さんの状況判断能力、冷静さ、そして銃の扱いを高く評価されました。どれも見事なモノでしたよ」

実に将来有望な人材です☆


嬉しげに、楽しげに褒められる彼の言葉を
リオは何処か他人事のように聞いていた。


試験の合格

候補生への認定


全て自分の大切な事であるはずなのに

それらは全て自分から遠い所にある物のような気がする



「おめでとうございます。今後に期待していますよ、東宮さん」




一礼して理事長室を去ったリオの肩には
寄り添うようにして小さな鶯色の小動物が乗っていた




+++++




「・・・東宮先輩?」



任務のため、彼等双子の現在の家と言ってもよい旧男子寮の入り口から出てきた雪男は

ちょうど自分の方へ歩いてきた華奢な人影に目を丸くする



「いきなり尋ねてごめんね雪男君。燐君、中にいる?」

「それは・・・はい」

「祓魔師のコートを着てるけど、雪男君は任務?」

「ええ。とは言っても簡単なものらしいですが」

「そっか・・・気をつけて」

「ありがとうございます」


リオは手に持っていた自分の携帯電話を確認すると、旧男子寮の敷居を跨ぐ



「先輩!!その・・・」


雪男が自分の横をすり抜けようとしたリオを思わず・・・思わず反射的に引き止めたのは無意識だ。



あの日---リオの認定試験であり燐の任務であったあの日、何があったのかは聞いている。


『炎を見られた』


それは雪男と同じく‘監視役’のシュラから聞いた話であり
自身の兄、燐がぽつりと呟くように言った一言であった。



「その・・・」


予想していなかった彼女の訪問に
咄嗟に引き止めたはいいが次の言葉が出てこない

そんな雪男の様子を静かに見ていたリオは、カツン、とローファーの踵を鳴らすと姿勢を正して雪男の正面に立った



「話をしたいの・・・・お願い」


誰と、何についての話なのか


そんな物は2人とも、言わずとも無くわかっている。



彼女は雪男の双子の兄を頭ごなしに糾弾するような人ではない。

まさか、攻撃を仕掛けたり傷つけたりするつもりもないだろう。

そしてリオにはネイガウスのように、直接的なサタンに対する憎悪も無いはず。


一瞬の内に、雪男の頭を巡る沢山の情報


何が安全で何が危険か

誰が見方で誰が敵か


それを自分達に教えてくれる人間は、もはや誰もいない。


そんな思いが、雪男を誰よりも慎重に神経質に疑い深くさせ---そしてやがて追い詰めていく。



しかし雪男から見て、今のリオはとても心穏やかに見えた



だから---


「兄を・・・よろしく、お願いします」



この選択は彼の中で、一種の賭けのようなものだった。


それはあの日以来、好きな料理も楽しそうにしなくなった---兄の為





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