アマガミ!!

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「どうです?もう慣れましたか、祓魔塾には」



1週間の苦行を終えた学生が、待ちに待った土曜日


9時、という休日ならまだ夢の中にいても不思議ではない時間に
リオは1人、理事長室のソファの腰を下していた。


テーブルの上には本格的なティーセットと、皿を彩る数々のスイーツ


それを挟んだ向こう側には、愉快な格好をした顔色の悪い男が1人いた。



「成績も優秀、他の生徒とも上手くやっていると聞き安心しましたよ」

「はい。皆さん、本当に良くしてくださいます」

「それはよかった」


眼の下に大げさな隈をこしらえた男は、紳士的ににっこりと微笑むと
手に取ったティーカップに口を付けた


「おや…これは本当に美味しいですね」


そして、上品だが何処か芝居がかった動作と口調でリオに向き直る


「貴女は紅茶を淹れるのがお上手だと奥村君に聞いていましたが・・・いや、本当に美味しい」


ありがとうございます。と小さく会釈し、目線を外すリオ

何処か人を試すような態度と---何よりこの男の挑発するようで、それでいて呑み込まれそうな瞳が初対面から苦手だった。


メフィストはそんな少女の様子も愛らしい、とか弱きものを愛でるかのように口角を上げる



「彼から、連絡はありましたか?」

「・・・・はい、それはもう」


朝といわず夜といわず、最近リオの携帯電話は鳴りっぱなしである


恐らくあの従兄弟殿は時差の事も頭から抜けているのだろう。

夜中の3時過ぎに着信が来たときは、そのまま電源を落とした。



「授業中も塾の最中も、夜中まで連絡が来てうざ・・・困ったので、着信拒否にしました」

「ブフッ」


可愛い従姉妹に連絡が付かずに狂乱する知り合いの様子が目に浮かんだのだろう
メフィストは愉快そうに口元を歪めている


「恐らく、今直ぐにでも此処へ来たいのでしょうがねぇ」


しかし、彼も私情で仕事を抜けられる立場にいませんから。


この自分の傍に可愛い従姉妹がいることに---自分の手の中で祓魔師として育てられている事に
あの男は端整な顔を歪め、歯軋りせんばかりに悔しがっている事だろう。


その様子を思い浮かべるだけで、美味しくご飯がいただけそうである。



「そういえば☆ネイガウス先生に、東宮さんは手騎士の才能があるとお聞きしたのですが」

「え」



まさかの話題に、リオの手の中でティーカップが跳ねる。


波打つだけに留まった中身にほっと溜息を付くと、ソーサーに戻しながらリオは例のハムスターを思った。



鮮やかな緑のボディにルビーの瞳


中身が悪魔な小動物は、既に彼女のペットとして日々の生活に溶け込んでいる。


どこでもいっしょ。

言うなればそんな感じである。


「(そういえばこの学園の女子寮って、ペット禁止?)」


ちなみにリオは生徒会役員の優遇を受けているので、高校3年生から寮で1人部屋をあてがわれている。


悪魔祓いの教本やら、あやしい薬草やらが所狭しと並ぶ部屋はいつのまにか「女の子の部屋」からかけ離れた場所となってしまい
同室者がいないことをリオは心から喜んだものである。



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