アマガミ!!
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先輩にはこっちの世界の事、知ってほしくなかった。
あの日去り際に、燐が残した言葉である。
出会いはありふれたものだった。
この正十字学園に入学したばかりの頃
まだ学園に不慣れな燐はもはやお約束のように、迷った。
そんな燐を案内してくれたのが、3年生になったばかりのリオだったのだ。
その後も縁があり、2人の交流は続いた。
先生に目を付けられやすい燐をリオが上手く庇うこともあれば、燐の学園内に開いた食堂にリオが招待された事もあった。
雨の日は生徒会室で一緒に昼食を食べる事もある。
燐にとってリオは、この学園で一番最初に優しくしてくれた人
それに今まで‘先輩’などと呼べる人がいなかった燐は、その存在が素直に嬉しかった。
自分が‘普通’の学生であるようで、嬉しかった。
リオは燐にとって、‘普通’の高校生であることの指標みたいなものであったのだ
悪魔を知らなければ---
「燐君」
「もう、気付いてるかもしんねーけど・・・」
燐は膝の上に乗せた黒猫に視線を向けたまま振り向かない。
足音や気配で、リオが自身の後ろ---開けっぱなしのドアの向こうに立っているのは気付いていた。
彼女を振り向かないまま、燐は呟くように、しかししっかりと誰かに言い聞かせるように話す
「俺、悪魔らしいんだ」
悪魔を知らなければ
知らなければ、例え燐が人並み外れていようとも
リオはその存在を厭わなかったかもしれない
「しかも俺・・・俺は---サタンの落胤なんだ」
しかし彼女は魔神(サタン)が何たるかを知ってしまった
その存在の邪悪さを
どんなにその存在が罪深いのかを
知ってしまった。
「青い炎を受け継いだ・・・」
彼女も言うのだろうか
自分は存在してはいけない人間だと。悪魔だと。
「サタンの仔なんだ」
死ねばよかったんだと
「怖い、か・・・?」
振り向いた燐の瞳は、宝石よりも美しい蒼だ
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