BASARA連載

□第二話 『入学式と熱い熱いクラスメイト』
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入学式。


それは新入生が学校生活を始めるうえで欠かせない行事で、婆娑羅学園でもこの日、全国の学校の例にもれず入学式が開かれた。

『見てお市ちゃん!同じクラスだよ!』

「本当……?市、嬉しい…」

クラス表の前でお市ちゃんと抱き合う(というか私が抱きついてるだけなんだけど)。

『良かったー。オーストラリアから帰ってきたばっかりでちょっと不安だったんだけど、お市ちゃんが傍にいてくれたら心配ないね!』


私がそう言ってお市ちゃんの手を取った時、後ろから誰かに肩を叩かれた。

「…アンタ、最近まで南蛮にいたのか?」


振り返ってみると、背の高い男。茶色い髪、学ランの下に校則違反の青いカラーTシャツ。そして――右目に眼帯。もしかしてこの人――

『ふ、不良!?』

「Ah?ちげーよ。俺は伊達政宗…ほら、クラス表に名前あんだろ。一年二組」

『げっ、一緒のクラスじゃん!!』

「だったら何だ!だいたいげっ″ってなんだ」

『不良と同じクラスだったらそりゃ誰でも嫌だわ!』

「不良じゃねぇって言ってんだろ!……ったく、他人を見た目で判断すんじゃねーよ。確かに眼帯は目立つが」

『ツッコミどころは眼帯だけじゃないよ!?上から下まで校則違反しまくりじゃない!カラーシャツとか!』

なんだこの人、自分の見てくれに自覚なしか。
ほら見ろ!言い争ってる間にみんな離れていくじゃないか!

「うるさい女だぜ…浅井の親戚かなんかか?」

ぽつりとつぶやかれた名に、動きを止めた。浅井…?

『え、長政さんを知ってるの?』

「さっき散々制服正せとか悪だとか言われたからな」

うわぁ…入学式から大変ですね長政さん……


「だがな、別に制服着崩してんのはオレだけじゃないぜ?ほら」


伊達政宗が指さした方向を見ると、真紅の鉢巻をまいた男子と目があった。

相手はずいぶん遠くにいるけど、私は五感が少しだけ他人より優れている……もちろん、視力も。


毛先が軽くハネている髪。遠方からでもわかる端正な顔。そして何より、強い意志を秘めた瞳――。

その時、相手もたしかにこちらを見た。深い目と視線が合う。 
一瞬、すべての音が止まった気がした。


「何してんの旦那、いくよ」

軽薄そうな声に呼ばれるまま、その男の子は私から目をそらすと雑踏に消えていった。


そのひるがえした学ランの背に描かれていたのは、――六文銭。




『……なんで学ランに六文銭なんか背負ってんの…』

「な?俺なんかまだマシな方だぜ?真面目な方がこの学園ではバカ見んだよ。 You see?」

『……I see…』




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