BASARA連載
□第二話 『入学式と熱い熱いクラスメイト』
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『だから、なんであんなことしたんですか竹中先輩』
「竹中先輩なんてそんな他人行儀な。半兵衛でいいよ」
「だから、なんであんなことしたんですか竹中先輩」
「何回繰り返すんだい、紅」
式の後で呼び出された職員室。私は竹中半兵衛と向かい合っていた。
「だいたい、なんで私のこと知ってるんですか?初対面ですよね」
「いいや。君が覚えてないだけで、僕たちは強い絆で繋がってるんだよ」
「いつ会いました?」
「前世で」
「………………………」
沈黙。
「ちなみに、君は僕の奥さんだった」
「中二病も大概にしろや変態メガネ」
「言っておくけど妄想じゃないからね!?」
「前世とか言い出す奴はすべからく中二病なんですよ!」
半兵衛さんとぎゃあぎゃあと言い争っていると、横からいきなり大喝が飛んできた。
「うるせーぞテメェら!」
くっ、ヤクザみたいに怖いな片倉先生。特に顔と声。
「反省の色が見られねえなぁ……?あんだけ入学式ぶち壊しといて」
「この政宗パワーアップ版不良教師め…」
「あん?政宗様がなんだって?」
政宗様!?様付けたよな今!?空耳!!?
「だいたい城月、テメェ政宗様とどういう関係だ?」
「は、…?」
「いつもは無関係の人間かばうような方じゃねぇンだよ。まさか…政宗様をたぶらかしたんじゃねえだろうな…?」
「誤解――!!誤解です!!!」
ていうか怖いよ!顔が!!般若が見える!
そもそも何でここで政宗が出てくるのよ! 入学式をぶち壊したことのお説教の域を超えてるじゃないか!!
「まぁまぁ片倉先生。そのあたりでおさめてあげて下さりませ」
私が困り切っていたからか、担任のまつ先生が助け舟を出してくれた。
「この子達も十分反省しておりますし、もうすぐ夕餉の時間。お腹がすいてはお説教も身に入りませぬ」
「しかし…」
「それにこのまつ、竹中殿の想いに感動いたしました。この世でも結ばれたいという想い、まさに夫の鑑、夫婦のあるべき姿にござります……犬千代様――!!」
なんだかよく解らないけれど、その後、まつ先生が片倉先生を説得してくれたおかげで片倉先生の指導から解放された。
『紅……本当に覚えてないのかい?僕のこと』
帰り道。別れ際の、半兵衛さんの泣きそうな、悲しそうな顔を思い出す。
「前世なんて……覚えてるワケないでしょ。――馬鹿馬鹿しい」
なぜだか胸に巣食っている焦燥感を無視して、私は家に急いだ。
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