BASARA連載
□第二話 『入学式と熱い熱いクラスメイト』
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「ハーイ、ミナサーン。入学オメデトゴザイマース。入学式進行役のザビーデース」
『なにあのエセ外国人』
「黙ってろ紅。こっちだって殴り飛ばしたくなるのを必死にこらえてるんだ」
ついに始まった入学式。私の両隣にはお市ちゃんとかすがが座っていた。
まさに両手に花、の構図だ。
「デハー、マズ最初ニ在校生代表ノ挨拶ネー。代表ハ生徒会副会長の竹中半兵衛君デース」
エセ外国人ことザビー先生に呼ばれて壇上に上がったのは、少し癖毛な銀髪の男子生徒。細身でどこか儚い印象がある、紫縁の眼鏡が似合う目鼻立ちの整った美形だった。
≪諸君≫
カンペなしで迎辞を読み始めた生徒会副会長。頭ももの凄く良さそうだ。
よく通る声も、すごくきれい。どこかで聞いたことがある気がするのは、どこかの芸能人か誰かに似ているのかなぁ?
≪入学おめでとう。僕たち上級生は君たちを歓迎するよ。ところで、新入生の諸君に一つ訊きたいんだけど――≫
そこで言葉を切った竹中副会長は、凄絶な笑みを見せ、一言。
≪この中に、城月紅はいるかい?≫
―――は?
なんか今、幻聴が聞こえた気がする。うん。そうだよ幻聴だよ。幻さ、マボロシ。
「紅……?」
「紅ちゃん……?」
お市ちゃんとかすがが私を心配そうな顔で見た。いや、見るな。こっち見るな。
式場内にも、「シロヅキって誰…?」「さぁ?」というざわめきが広がる。
視線を感じて男子側の座席を見ると、やっぱり政宗たちがこっちを見ていた。
≪紅、いるんだろう?わかってるから早く――≫
≪や、やめぬか半兵衛!≫
竹中副会長を押さえつけようと壇上に上がってきた大きな体の生徒。ていうかアレ、ほんとに高校生? 動物園から脱走してきたゴリラか何かじゃないの?
≪止めないでくれないか、秀吉!今年こそ紅に会えなかったら、僕は死んでしまう!≫
≪だからって迎辞を使うな!入学式を何だと思っている!! 行事を私物化するでない!!≫
≪でもどうしよう秀吉!今年も紅がいなかったら!?僕らはもう永遠にめぐり会えないんじゃないか――≫
≪我の話を聞け!≫
『あの!』
なんかもう、聞いていられなくて立ち上がってしまった。仕方ない。なるようになれ。
『城月紅は、私ですが』
――しぃん、と場内が静まり返った。みんなの視線が痛い。
≪紅…?本当に、紅なのか…?≫
嬉しそう、というよりは呆然とした、竹中副会長の声。秀吉さんも驚いた顔をしている。
私は渋々うなずいた。
『はい。ただ、あなたの捜している人ではないと――』
≪逢いたかったよ紅! やはり何百という時も僕たちを隔てることはできない!≫
『話聞けぇぇええ!!』
マイクの大音量で私の名前を連呼するなぁああ!
「テメェ、さっきから黙ってきいてりゃ、紅に何言ってやがんだ…?」
視界の端で、政宗が立ち上がったのが見えた。
「紅に気があるからってcrazyなことしてんじゃねーぞ。生徒会なら何やっても許されるってのか?Ah?」
口調若干不良っぽいけど、なんか私のこと助けてくれるみたいだ。
「貴っ様ぁぁああ!半兵衛様を侮辱するか!」
今度は生徒会席で、銀髪の男子が立ち上がった。目つき悪っ!
その銀髪男子の隣に座っている黄色いパーカーの男子が、止めに入った。
「三成、落ち着こう、な?」
「黙れ家康!半兵衛様が馬鹿にされたのだぞ!?あの小物ごときに!」
「Ah?小物だと…?」
「ちょっ…政宗!喧嘩は――」
怒声で混乱する体育館。
せっかくの入学式を、――私が、壊しているの。
ヤダよ。みんな、やめてよ。私が何をしたっていうの。
私が政宗を止めようとした時
パァン、と何かがはじける音がした。
鉄砲音。硝煙のにおい。
動いていた生徒全員の行動が止まる。
「り、理事長!」
濃姫さんの切羽詰った声が聞こえた。え!?今発砲したの信長理事長!?
「これ以上余の前で騒ぐと言うなら、愚民どもよ」
重々しい声が体育館にこだました。
「次は、その命ないと思え」
理事長の鶴の一声で、その騒ぎは回収されました。
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