短編
□突撃!お宅訪問
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「あーつーいーいいい」
部屋のド真ん中で大の字になり、一人雄叫びをあげた。
その時。隣に置いていた携帯電話が鳴りだした。
画面を見れば、《宮田さん》の文字。
宮田さんから電話なんて珍しい。とりあえず、出てみた。
「もしもーし」
『ああ、今、大丈夫ですか?』
「はい、大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
『今日。時間、ありますか』
「ありありですよ。今、暇すぎて部屋で大の字になってたんです」
そう言うと、電話の向こう側から、鼻で笑う声が聞こえた。
とんだ暇人だな、とか思ってるんだろう。
『とんだ暇人ですね』
ほらね!!!!
「どうせ暇人ですよ!…宮田さん、今日は仕事じゃないんですか?」
『暇人とは違って、仕事でしたよ。ただ、貴女と違って俺は優秀なので、早く終わったんです』
「…………。」
この宮田司郎さんとやらは、喧嘩をうってんのかな?ん?
大学生は今夏休み真っ最中なんだよ!(バイトも休みだ!)
それに成績はそれなりだよ!!
そう言い返してやろうかとも思ったけど、暑くて、かったるいので、スルーする事に。
『暇なら、何処か出掛けますか』
「そうですね!うーん。何処が良いかなぁ…」
『何処でも良いですよ』
「あ!!じゃあ宮田さんち!」
* * *
と、言うわけで、宮田さん宅の玄関前なう。
まさか宮田さんからOKが出るとはね!
医院から私の家に迎えに来てくれた宮田さんは、只今家の鍵を探し中。まさか無くしたとかじゃないだろうな。
「え、…宮田さん宮田さん」
「……何だ。……院長室に置いて来たか…?」
「ズボンのお尻の方のポケットからキーケース見えてますけど」
「…………………………。」
がチャリ、と部屋の鍵を開けて、ドアを引く。
「どうぞ」
あ、なんかさっきの痴態を無かった事にしようとしている。
そう感じ取った私は、さっきの出来事を無かったことにしてあげた。
うん、何も見てない言ってない。
と、言うわけで、初!宮田宅!入場!
「う、うわぁあああ」
き、きったねぇぇぇぇえ!!
…何なんだ、この部屋は。
洗濯物→放りっぱなし
キッチン→色々ゴチャゴチャ
参考書→放りっぱなし
書類らしき物→放りっぱなし
ゴミは、流石にちゃんと捨ててあるみたいだけれど。
「み、宮田さんち、汚いですね…」
「そうでもなければ、桜さんを家に連れてなんて来ないですよ」
「そうですかー……。…え?」
「何か」
「何か、じゃなくて。え、それじゃあまるで私が掃除するみたいじゃないですか」
「当たり前でしょう」
当たり前でしたか(・ω<)′☆
* * *
「はー、綺麗になった!」
お掃除開始から四時間。
やっと、ピカピカのお部屋になった!
掃除って、始める前は憂鬱だけど、いざ始めると、楽しかったりして。
「お疲れ様でした」
「びゃああああああ!!」
「…五月蝿いな」
キンキンに冷えた缶を私の項にピタリと当てた男・宮田司郎は、眉根を寄せて、そう言い放った。
誰のせいでこんな雄叫びあげることになったと思ってるんだ。
ちょっとイラッとしていると、その冷えた缶を私の目の前に持ってきた。
「喉。渇いてるだろう」
「あ、はい、かなり…。頂きます!」
ゴキュゴキュと喉を鳴らして、勢いよく飲んでいく。
仕事をした後のお茶。本当に美味しい。
「せっかく綺麗にしたんだから、もう汚さないで下さいよねー」
「それは分かりませんね。何せ学生と違って、俺は忙しいので」
「え、学生も何だかんだ忙しいんですけど」
「まぁ、また汚くしてほしいと言うなら、」
また、何を言い出すんだろうか。じっと宮田さんを見詰めながら、お茶を口にする。
「桜さんがここに住めば、汚れないんじゃないですか」
「ブッ」
「………。」
(ば、馬鹿な事言うから噴いちゃったじゃないですか!)
(馬鹿は桜…お前だ)
(………。お茶まみれの顔でもイケメン、ですよ)