短編
□約束ノ場所
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ザッ、ザッ
私は傷付いた左足を引きずりながら、蛭ノ塚を歩いていた。
傷付いているのは左足だけじゃなくて。至る所に切り傷。出血も段々と酷くなっている。
あまり、動き回らない方が良いんだろう。…それでも。
私は牧野さんに会いたかった。
あの時、牧野さんはちゃんと逃げられたんだろうか。無事なんだろうか。
『お互い無事だったら、蛭ノ塚にある社の裏で─…!』
そういって、私は屍人をおびき寄せて牧野さんを逃がした。
そのおかげで体中傷だらけなわけだけれど、彼が無事なら。
「─ここ、を降りれば…」
崖の下に、社が見えた。崖と言っても大した高さは無い。
ヒョイと飛び降りれば、水溜まりがビシャンとハネた。
体中に当たる雨が、ひどく冷たく感じる。寒気も酷い。…血を、流しすぎたのかな。
そんな事を思いながら、私は社の裏へと向かった。
「牧野、さん」
「─!!桜ちゃん…無事で…!」
しゃがみ込んでいた牧野さんは、私に気が付くと立ち上がり、ヒトミに少しナミダをうかべてこちらへあるいてきた。
ワタシも、ウレしさからかヒトミにナミダがたまってきて、それがアフレてホホをツタう。
イきてた、マキノさんが。
「あは、あ、はは…あはははは!」
「あ…、あ…!」
ナミダでヌれたホホをヌグえば、マっカなチがドロリとテについた。
ぎゅってダきシめたくてチカづくけれど、カレはナゼかあとずさりしてしまう。
─そして。
「う、うわぁあああ!!」
「マキノ、さ、あは、は!!!」
ああ、オニゴッコナンダ。マキノサンガ、ワタシカラ、ニゲルワケナイモノ。
ワタシハゼンリョクデ、マキノサンヲオイカケタ。
キット、ワタシタチのナカマニ、シテアゲルカラ。
「アナタヲマモルカラ」
END