短編
□Call
1ページ/1ページ
─ブーッ、ブーッ
「─はぁ…、」
宮田さんは、一気に眉間に皺を寄せて電話に出た。それはもう不機嫌極まりない声で。
「ああ」を二度三度繰り返して、すぐに行く、と電話を切って携帯を乱暴に仕舞った。
「…病院から?」
「ああ。急患らしい。……すぐに来てくれ、と。……すまない」
悲しそうな顔で、私の頬を優しく撫で、軽く口付けると「行ってくる」と部屋を出て行った。
最近、どうも忙しいらしくてデート中に、就寝中に、それから、変な話、アレをしている時にと、所構わず電話が掛かってきていた。
仕事だから仕方ないのは分かってる。だけど、やっぱり寂しいと思ってしまう私は、ワガママなんだろうか。
一人になった空間には、先程とは違って静寂だけが残っている。私はソファの上で体育座りをした。
「…はぁ…」
* * *
フ、と髪に触れる何かに気付いて目を覚ました。
…目を、覚ました、と言うことは、私はいつの間にか寝ていたみたいだ。
重たい瞼をこすって、髪に触れている《何か》に手を伸ばした。
「…手…?」
「起こしたか?」
「─…宮田、さん?」
「ただいま」
ぼやける視界を戻すため、何度か瞬きをして、髪に触れている手の主へと視線を持って行った。
そこには、疲労困憊といった表情の宮田さんの姿。
私はムクリと起き上がって時計を見る。宮田さんが行ってから、大体4時間が経過していた。
「おかえり、なさい。今日は早いですね、何だか」
「早く終わらせたんだ。…桜が、寂しがっていると思ってな」
「─よく分かってるじゃないですか」
隣に腰掛けた宮田さんに、すかさず抱き付けば、彼もすぐに抱きしめ返してくれた。
「仕事なのは分かってるんです。我慢しなきゃいけないのも、分かってるんです。でも、やっぱり寂しくて」
「あぁ…」
「宮田さんと、いっぱい一緒に居たい…」
「……俺も、桜、お前と…─」
ブーッ、ブーッ
「「………。」」
二人で盛大な溜め息を吐いて、携帯のディスプレイを見る。そこには《神代淳》の文字。
それを見るなり、宮田さんは携帯の電源を落として私の顎を掴み、グッと自分の方を向かせた。
「い、良いんですか?神代と教会は絶対なんじゃ」
「お前が気にする事はない。俺だけに、集中してくれ」
「─んっ」
触れ合う唇は、徐々に激しさを増していき、私はそのままソファに押し倒されたのだった。
[─翌日]
(おい、宮田!何故電話に出なかったんだ!)
(やれやれ。空気の読めない婿養子の登場ですか)
(なんだと!?)