短編

□Call
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─ブーッ、ブーッ



「─はぁ…、」


宮田さんは、一気に眉間に皺を寄せて電話に出た。それはもう不機嫌極まりない声で。
「ああ」を二度三度繰り返して、すぐに行く、と電話を切って携帯を乱暴に仕舞った。


「…病院から?」

「ああ。急患らしい。……すぐに来てくれ、と。……すまない」


悲しそうな顔で、私の頬を優しく撫で、軽く口付けると「行ってくる」と部屋を出て行った。

最近、どうも忙しいらしくてデート中に、就寝中に、それから、変な話、アレをしている時にと、所構わず電話が掛かってきていた。
仕事だから仕方ないのは分かってる。だけど、やっぱり寂しいと思ってしまう私は、ワガママなんだろうか。

一人になった空間には、先程とは違って静寂だけが残っている。私はソファの上で体育座りをした。


「…はぁ…」







* * *




フ、と髪に触れる何かに気付いて目を覚ました。
…目を、覚ました、と言うことは、私はいつの間にか寝ていたみたいだ。
重たい瞼をこすって、髪に触れている《何か》に手を伸ばした。


「…手…?」

「起こしたか?」

「─…宮田、さん?」

「ただいま」


ぼやける視界を戻すため、何度か瞬きをして、髪に触れている手の主へと視線を持って行った。
そこには、疲労困憊といった表情の宮田さんの姿。
私はムクリと起き上がって時計を見る。宮田さんが行ってから、大体4時間が経過していた。


「おかえり、なさい。今日は早いですね、何だか」

「早く終わらせたんだ。…桜が、寂しがっていると思ってな」

「─よく分かってるじゃないですか」


隣に腰掛けた宮田さんに、すかさず抱き付けば、彼もすぐに抱きしめ返してくれた。


「仕事なのは分かってるんです。我慢しなきゃいけないのも、分かってるんです。でも、やっぱり寂しくて」

「あぁ…」

「宮田さんと、いっぱい一緒に居たい…」

「……俺も、桜、お前と…─」


ブーッ、ブーッ


「「………。」」


二人で盛大な溜め息を吐いて、携帯のディスプレイを見る。そこには《神代淳》の文字。
それを見るなり、宮田さんは携帯の電源を落として私の顎を掴み、グッと自分の方を向かせた。


「い、良いんですか?神代と教会は絶対なんじゃ」

「お前が気にする事はない。俺だけに、集中してくれ」

「─んっ」


触れ合う唇は、徐々に激しさを増していき、私はそのままソファに押し倒されたのだった。






[─翌日]
(おい、宮田!何故電話に出なかったんだ!)
(やれやれ。空気の読めない婿養子の登場ですか)
(なんだと!?)



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