長編
□警告
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─双子。
牧野さんと宮田さんは、双子なんだとか。
牧野さんがお兄ちゃんで、宮田さんが弟さんで。
どうりでで似ているわけだ。
「凄く似てますもんねー」
改めて、牧野さんの顔をまじまじと見る。
ホクロの位置が逆ってくらいじゃないかな、違うのって!
「あ、あの…あんまら見られると、恥ずかしいよ…」
「あ、す、すみません…!」
とりあえず、時間も時間という事で、牧野さんに挨拶をして不入谷教会を出た。
もう5時過ぎだというのに、外はまだ明るい。
夏は、昼の時間が長いから好き。
少しウキウキしながら帰りの道を歩いた。
* * *
翌日。
朝早く目が覚めた。やることもないので、散歩をする事に。
外に出れば、気持ちの良い風が吹く。
なんだかフと気になって、宮田医院のある方へと歩いて来てしまった。
そびえる病院を眺める。青い空に、白い壁に覆われた大きな病院……なんだか絵になるなぁ。
そんな事を考えながらボーっとしていると「何をしているんですか」と背後から声が。
誰かと思って振り向くと、そこには宮田さんが。
「宮田さん!おはようございます」
「…おはようございます。…それで?」
「え?」
「ここで、何をしているんです?」
何やら不審者だと思われてるみたい。眉間に皺が寄ってる。とりあえず、正直に「散歩を」と言うと、眉間にあった皺が消えた。
「そうですか。」
「はい。宮田さんは、これから病院ですか?」
「いえ。俺も、散歩です。」
私と宮田さんは、病院の近くにあったベンチに移動した。
聞けば、今日は学校に用事があるんだとか。夏休みに学校に行かなきゃいけないなんて、高校生って大変なんだな、と思った。
「学校の事に、病院の事。色々大変ですね」
「まぁ、それが俺の仕事なので。」
「そ、そうですか…」
おばあちゃんの家に行ったときにも思ったけど、会話が続かない。なんだろう、私、嫌われてるのかな。
何か会話は無いものか。うんと悩んでいると、意外にも宮田さんが沈黙を破ってくれた。
「神木さんも、学校の事に家のこと、大変ではないんですか」
─家のこと。ああ、おばあちゃんの事かな。
私はブンブンと頭を横に振る。
「いえ!学校も楽しいし、お料理も、好きなので!」
「─そうですか」
宮田さんは小さく微笑むと、立ち上がった。
病院にある時計を見れば、時間は意外にも進んでいて。
私も宮田さんに続いて立ち上がる。
「神木さん」
「はい!」
「あまり、深入りしないようにと、ご両親に伝えて下さい。」
「…?」
「では」
何のことだか分からない言葉を言われて、私はただただ、頭にハテナを浮かべるしかなかった。
ただ、宮田さんの表情が、どこか哀しげで、必死だというのは分かったんだ。
-続-