長編

□人ではない、それ
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明かりのない暗い道を、手に持ったライトだけを頼りに、ただただ歩いて行く。
今にも壊れそうな木造の橋を渡ると、少し先に懐中電灯の明かりが見えた。
私たち以外に、誰か居るんだ。
少しホッとして先生に目をやると、どこか表情が険しくなっている様に見えた。
改めて、ライトを持つ人に目をやった。
──何だろう、違和感を感じる。凄く、嫌な予感…。


「先生ぇ、村の人ですよ!早く声掛けましょうよ!おーい!!」

「安野!」


依子が大きく手を振りながら大声で呼ぶと、
ライトが此方を向いた。
その光は、徐々にこちらへ向かって来ている。
その近づくスピードが、段々と早くなってきた。


「──っ!!」


ソレが近くまで来て、漸く気付く。
私たちが人だと思っていたモノは、人ではない。
肌の色は青白く、目から血の涙を流している。
間違いなく、生きている人間なんかじゃない。

──バケモノ。

非現実的な生き物を前に、私の膝はガクガクと震えた。


「神木、明かりを消せ!」

「―……っ」

「神木!!」

「!…っは、はい…!」

「二人ともこっちだ。早くしろ!」



竹内先生に続いて、私と依子も走る。
チラリと後ろを見れば、バケモノはやはり、私たちの後を追ってきていた。

…このままじゃ、みんな…


そう思った私は、先を走る二人には続かず、横道に入りこんだ。

バケモノは上手く私の方に来てくれているみたいだ。
──ここからが、勝負。

足の速さには自信があった。
体力も、それなりだ。
あのバケモノを、撒いてやる。


私は全力で集落を走り回った。






* * *







「はぁ、はぁっ……」


しばらく走って、後ろを振り向く。
もう、あのバケモノは追ってきてはいないみたいだ。
ハァー、と大きく息を吐いてから、ライトをつけて周囲を見渡す。
…私が羽生蛇村に居た頃、こんな場所、あっただろうか…


そんな事を考えていると、遠くで銃声が聞こえた。
─依子と先生に、何かあったんだろうか…!

私は急いで銃声が聞こえたと思われる方向に走った。








-続-


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