長編
□少し黙っていてくれ
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大字波羅宿/耶辺集落
初日/2時16分18秒
「──ぅ…っ」
暖かくて心地いいような、でも、寝心地は悪い…そんな中、私は目を覚ました。
身体を起こそうと地面に手を付き力をいれると、下から呻き声が。
はて、と思って良く下を見れば、私の下には竹内先生の姿。
そして、竹内先生の腕は、私の腰の辺りに回されている事に気づく。
─た、倒れた時に、庇ってくれた、んだよね。
そうだよね!?うん、きっとそうだ。間違いない。
今の状況に混乱していると、竹内先生が目を覚ました。
「…─大丈夫だったか?」
「あ、あの…は、はい!ありがとうございます、先生」
そう言って先生を見ると、先生は僅かに微笑んでみせた。
な、何だろう…!ドキドキしちゃうんだけど…!
長いようで短い間、見つめ合ってしまっていると、
少し離れた場所から「うーん…」という声が。
私は慌てて先生から離れ、立ち上がって持っていたライトを声の方へ向けた。
「…よ、依子!」
「桜!それに先生ぇ!
これ、どうなっちゃってんですかぁ!?
ココ、ドコなんですか!?何かもうメチャクチャですよぉ…ワケ分かんなすぎぃ!」
「…車に居ろと言ったはずだ」
いつの間にか立ち上がっていた先生は、眉間に深い皺を作って依子を見た。
「そんな事より何が起きてんですかぁ!?何なんですか、コレ?」
「…だから付いて来るなと言ったんだ」
「先生ぇ、とにかく村の人探しましょうよぉ…きっと大騒ぎですよ?」
「ハァー……少し黙っていてくれ」
怒気を含んだ先生の声にも負けない依子に、また深い深い溜め息を吐いた。
私は苦笑いをしながら二人を見ていると、
突然、ズキンと頭が痛んだ。
私が頭を抱えると同時に、2人も私と同じように頭を抑えた。
「うぅ……っ」
「やだ、何、コレ…?なに…?」
さっき、気絶する前に感じた頭痛と同じ。
また痛みに目を閉じると、目を閉じているハズなのに、何かが見えた。女の子が、白い犬と一緒に走って、る…?
─これは、私の視界じゃ、ない。
「─…これ、は…」
竹内先生が呟いて、態勢を立て直すと、私と依子に目を配らせた。
「良いか、安野。今度こそ私の言う通りにしろ。」
「え?」
「私が呼ぶまで、目を閉じて、じっとしていろ。…分かったな」
依子は素直に頷くと、目を閉じてうずくまった。
竹内先生は持っていた鞄から拳銃を取り出し、銃弾を込める。
私も、出した方が良いのかと鞄に手を伸ばしたけれど、それは先生に阻止されてしまった。
「先生ぇ…?それ、って…?…本物?」
「……よし、来い」
「「…はいっ」」
先をゆく先生を見失わない様に、私と依子は歩き出した。
-続-