長編
□サイレン
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「誰だ!」
若い男の声が響いた。
私はその場に、小さく座り込んだ。
─けれど、いつまで経っても何も起こらない。
改めて、こそりとその場を覗くと、
村人達は、私の居る場所とは真逆の方向に視線を送っていた。
私以外にも、誰かが居て、こうして覗いていたみたいだ。
とりあえず私の存在がバレた訳では無いという事で、
ハァ、と一つ溜め息をつき、竹内先生の車に戻る為、歩き出した。
しばらく歩いているけど、一向に車が見えてこない。それどころか、集落に迷い込んでしまったみたいだ。
私、こんなに方向音痴だったっけ?なんて思いながら腕時計を見ると、あと数分で0時になろうとしてる…どうりで眠い筈だ。
目をこすっていると、正面に明かりが見えた。
目を凝らして見ると、竹内先生が眉間に皺を寄せながら小走りでこちらに来ている。
捜しに来てくれたんだ。
「竹内先生!」
「遅い。全く、どこまで行っていたんだ」
「すみません…実は─」
迷った事。そして、何より…秘祭を見たこと。
それを伝えようとした時だった。
突然、身体が大きく揺れた。
─地震だ!
それと同時に、何かが頭の中に入ってくる感覚。頭が痛い。
痛みに目を閉じると、何かが見える。
何なんだ、これは。
私が呻くと同時に、先生も、うっと頭を抱えた。
──ウウゥゥゥゥゥ
どこからともなく聞こえてきたサイレンの音と共に、私の意識はそこで途絶えた
-続-