長編

□10年ぶりの村
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         城聖大学
前日/22時00分/29秒




「…すみませんでした」


出発日の夜。城聖大学校門前。
昼間とは違い、賑やかさが欠片もない静かな学校の前で、
私は竹内先生に深々と頭を下げるハメになった。

…それというのも


「私を置いて二人で旅行なんて、許しませんからね!」

「「─ハァ……」」


依子の同行を、止められなかったからだ。
竹内先生は明らかに嫌そうにしながら額に手を当てた。


「安野、分かっているのか?これは旅行じゃなく調査だ。
それも、危険が伴う─…」

「良いんです!ほら、行きますよ!!」


ズンズンと先生の車へと向かっていく依子を見て、私と竹内先生は、また大きなため息を吐いた。



* * *



数時間掛けて、羽生蛇村に到着した。
夜だったお蔭で道路も全然混んでなくて、思ったよりも全然早く村に到着した。
それにしても、約10年ぶりに帰ってきたこの村は、昔と殆ど変わらない。


「ここが目的地ですかぁ?…何にもない村ですねっ」


依子が珍しい物を見るように、村中を歩き回っている。
そんな彼女を苦笑いしながら見つめる私の肩を、竹内先生が叩いた。


「これを持っていなさい」


そっと渡されたのは、今までドラマやマンガでしか見たことのない、拳銃だった。
驚いて手から落としそうになったけれど、なんとか手に収める。


「何が起こるか、分からないからな。」


そう言った先生の表情は真剣そのもので。
竹内先生には、まるでこの後起こる事が分かっている様だった。


「とりあえず時間が時間だ、宿を探すぞ。調査は明日からだ」

「それなら、私の家が近くに。…と言っても、まだあるか分かりませんけど…」


行くだけ行ってみよう、という事で、はしゃぐ依子を呼んで、私の家があった方へと向かった。








-続-


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