巡る道
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部屋に侵入していた迷子を発見してから数日、毎日のようにどこかで見かけるようになった。
恐らく今までにも出会った事はあるのだろうが、名前も知らない相手を意識して見ることはしない。
知り合いになったからこそ、今日も会った、昨日も会ったと認識出来るようになったのだ。
「三之助!どうしたの?」
今日は裏庭でぼーっとしているのを発見した。
「あやめ先輩!それが、どこに行けばいいのか分からなくなって。先輩は?」
「あはは、そっか。私はちょっとあそこで読書でもしようかなって。」
そう言って木陰を指さすと、じゃあ俺もそうします。とあやめの隣に並んだ。
三之助は、木にもたれて本を開くあやめの横に肩をくっつけて座り、ぼーっと空を眺めながら、ここ最近気になっていることを聞いてみようか。と考えていた。
「あのー・・・先輩って恋仲の人とかいないんすか?」
「うん?急にどうしたの?」
いきなりの質問にびっくりしたあやめは、本から目を離して三之助の顔を覗き込んだ。
「えー、あ、そう言う雰囲気がないからどうなのかなーって。ちょっと気になったんで。」
「そう言う雰囲気って・・・・まあ、いないけどね。」
遠くを見つめて自嘲気味に笑った。
あやめと接するようになってから彼女の噂を時々聞くようになり、上級生の中で人気のくのたまだと言う事を知った。
それを知ってから、何故か恋仲の相手がいるのかが気になって仕方なかったのだ。
「で、そう言う三之助はどうなの?好きな子とかいないの?」
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