巡る道
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「どうした?今は見ての通りだ。」
「うあ、あ、いえ、あのー、追加予算の申請をお願いに来たんですけど・・・しょ、書類ここに置いておきますのでまた後日改めてお願いします!」
兵助は一気にまくしたてるように言うと、近くの文机に書類を置き、勘右衛門の手を引っ張って逃げるように去って行った。
「なんだ?・・・おい、何なんだあいつは。」
「さあ・・・・どうしたんだろ兵助。まあそれはいいよ、先そっち。」
「ああ。これは・・・」
あやめは今しがた文次郎に渡した帳簿を指さす。
早くやって早く終わりたいのはみんな同じ。
また黙々と作業へと戻って行った。
「勘ちゃん見ただろ?俺のあやめ先輩にあんなにべったりくっついて!やっぱり潮江先輩なんだよ・・・・。」
「いや、あれはどう見ても先輩が寄って行っ・・・いや、何でもない。」
おぼつかない足取りでふらふらと歩く姿は、まるで浮気現場を目撃してしまったかのよう。
実際、兵助は浮気現場と同じだと思っていた。
自分の元から離れて、切なげに見ていた男の所に行った。と。
「でもさ兵助、何か質問してたのかもしれないぞ?帳簿を手に持ってたし。な?」
落ち込み続ける友人を励ますのも楽じゃない。
けれどこのまま放っておくわけにもいかず、勘右衛門は必死になって慰めていた。
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