巡る道

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「この方が迷子になりにくいだろー?」


ニヤッと悪戯っぽく笑った勘右衛門に、一生懸命抗議しているが、あやめの顔は真っ赤。

そんな姿に、勘右衛門は一人満足していた。















町へ着く頃には繋いでいた手にも違和感はなくなっていて、ずっと昔からそうしていたかのようにぐいぐいと引っ張られてあちこちのお店を回って行く。



「あ、可愛い!」


一件の小間物屋で、あやめは朱塗りの上品な櫛と、牡丹が描かれた櫛とを持って首をかしげて悩み出した。


「こっちの方がにあうんじゃない?」


勘右衛門は朱色の櫛を取ってあやめの髪に当てて合わせる。
次に牡丹が描かれた櫛を。


「うん。やっぱりこっちの方がいい。」


「じゃあそれにする!」



店主に渡して会計を済ませて外に出れば、そろそろおやつが欲しくなる時間。
いつもよく行く甘味処へ足を運んだ。








「なあ、あの、あいつ。櫛とか買ってくれないの?」


ふと疑問に思った事。もしそうなら自分が贈ろうかと考えて。


「ううん。前に買ってくれた事あるんだけど、処分しちゃった。」



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