短編・番外編
□drape
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「兄さん!!ちょっと、落ち着いて!!!(僕だって我慢してるんだから!)」
「そうや!ボンも落ち着いてください!(ええ声やないですか!)」
理事長室前の廊下。
燐と勝呂は、理事長室から漏れ聞こえてくる
綾達の只ならぬ声に半狂乱状態だった。
「チクショー!!メフィストのやろ〜!!綾に何してやがるんだぁ〜〜///!!!」
「妙寺〜〜!!!なんて破廉恥なぁ〜〜///!!!」
極限状態の燐は目が据わり、柄を握り締めて呟く。
「こうなったら倶利伽羅で・・・!!!」
「おや、何やらこちらは物騒ですねぇ。」
意地の悪い笑みを浮かべたファウストが扉を開けて、すっかり取り乱している男達を見渡す。
「テメェ!メフィストぉぉ、お・・・?」
ファウストの後ろから出てきた綾の姿に、その場にいた全員が言葉を失った。
デコルテが大きく開いた純白のドレスに身を包み、ふんわりとサイドにカールされて露わになった項が、綾の無垢で、けれど女性らしい色を滲ませている様だった。
「・・・妙寺・・・か?」
「綾チャン、キレーやなぁ・・・。」
「あ、皆・・・何かあったの?」
綾は、不思議そうな顔で羽交い絞めされている燐と勝呂を見た。
雪男は燐を掴むのも忘れ、惚けながら呟いた。
「綾さん・・・、綺麗だよ、スゴク。」
「雪君・・。エヘヘ、恥ずかしいな‥。」
隣から黒のタキシード姿のアスモデウスがそっと声をかける。
「綾、手を・・・。」
「アッシュ…、うん。ありがとう。」
白のロンググローブをはめた手を、アスモデウスの腕に控えめに絡める。
それを見たファウストが綾に詰め寄った。
「綾、エスコートは私がすると言ったではないですか?」
「スミマセン、理事長はお忙しいと聞いたので。それに・・・。」
「なんです?」
ムッとしながら、言いにくそうな表情の綾の言葉を待つ。
「あの・・・、身長差がありすぎたり・・、色々と、目立ってしまうので・・・。」
195cm-(154cm+8cm)=33cm
勝ち誇ったような顔のアスモデウスが綾の手を引きながら囁いて行った。
「残念でしたね、フェレス卿。」
184cm-(154cm+8cm)=22cm
「ごめんなさい…理事長。お仕事、頑張って下さい。」
遠ざかっていく綾を見つめながら、ファウストは『嫉妬』という禍々しい空気を放つのだった。