群青の

□A-Z
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チャイムが鳴り、一日の授業が終わる。

『あの日』以来、クラスの担任は臨時の教師が担当する事になり、元の担任は病欠、ということで顔を見ることはなかった。
後日、校長先生ならびに数名の先生方の揃う校長室に呼び出され、他言無用と念を押され、合否の通知は自宅に郵送される旨を聞かされた。

私といえば、『個性』について知る為に書店へと足を運んでみた。
けれど専門書の桁違いの価格帯に、早々に尻尾を巻いて退散して、貧乏人にはありがたい図書館に入りびたりの生活が始まった。

友人達には、急に真面目になって怪しい、などとからかわれもしたけど、頑張れという励ましに勇気をもらい、また今日も司書のお姉さんに挨拶をして目当ての書棚に足を運んだ。

通うようになってから、実は結構日数が経つ。
あれからポストを覗く事数回。それでもう飽きてしまって、不合格だったんだろうという事にして独学にシフトチェンジした。
教えてもらえれば勿論ありがたいが、自分で出来ることは望む限りやってみる。
勿論、お財布の中身が許す限り。


数冊の専門書を小脇に抱え、もう一冊データベースで調べた本を棚のマークに沿って探していた時、その本はそこに立っていた人の手の中で開かれていた。

急ぎではないし、また後日にしようとそっと踵を返そうとした瞬間、声をかけられた。

「悪い。この本、欲しかったんだろう?」
「?そう、ですけど…。」

怪訝そうな顔で返事をした千影の前に、それはニコリともせずに本を差し出した。
戸惑いながらそれを受け取り、その相手を見た。

右半分が白、左半分が赤の髪の毛の男の子だった。歳は千影と同じ位に見えなくもない。

そんな千影の目に何故か照れたような顔で立ち去る男の子にありがとう、と言うと周囲から静かにするようにとジェスチャーで叱られた。

口を手でそっと押さえ頭を下げながら受付で手続きを済ませ、そそくさと図書館を出た。
いつもなら少し居座るのだが、この所、預かっている猫の様子が日に日に手に負えなくなっているせいで家に帰らなければいけなかった。

(そういえば、猫缶もうなかったなぁ…。買って帰るか…。)

重みの増した鞄を肩に担ぎながら、千影は日暮れにはまだ早い街をのんびりと歩いた。






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