短編・番外編


□正十字学園物語3
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今日は、念願だった『アレ』を実行したいと思います!


【その壱…噂】





修了のチャイムが、一斉に生徒達に安堵の溜め息をつかせる。
綾も、例外無くその内の一人であったが、この日の綾はそわそわとドキドキが合わさり、何とも微妙な表情をしていた所為で、周囲のクラスメイト達に奇異の目で見られていた。

それもその筈、数日前に計画(悪巧み)した事を実行に移すと決めていたからだ。

落ち着け落ち着け、と自分に言い聞かせながら筆記用具や教科書類を鞄に片付ける。

数日前に借りた三輪の制服は別のバッグに綺麗に畳んで持ってきた。
髪も下ろすよりまとめた方が似合う気がしたのでその道具も持ってきた。

学園でソレをすると何かと問題がありそうだし、綾自身もさすがにまだそこまでの勇気は出なかったので、一先ず祓魔塾で試してみて、周りの反応を見ながら、今後学園でも通用するのかを見定めたい。


とりあえず問題は、着替える場所だ。

女子トイレや女子更衣室など考えたが、万が一、男子の制服姿の人物がそこから出てくる所を見られたら…、

「(っ、…大騒ぎになるかも…)」

かと言って、男子トイレや男子更衣室に入るなんて考えられない!!

「(ぅぅ〜ん、どうしたら…)」

仕舞い終えた鞄を手に、クラスメイト達に別れを告げて荷物を抱えて教室を出る。

さぁいよいよ塾の時間が迫っている。

「(やっぱり家に戻って着替える方が安心かな…でも折角用意してきたのに…)」

綾の背中に、言いようの無い哀愁のような空気が舞い、その後ろから歩いてきていた三人の男子生徒たち(内一人は片手で額を軽く押さえ、一人は噴き出しそうになる笑いを手で押さえ、もう一人は、どうしたものかと考えあぐねている…)が、やれやれといった風体で声をかけた。

「おい、妙寺…!」

背後から掛けられた聞き覚えのある声に、綾は電流が走ったようにピクリと反応して、立ち止まって後ろをふり向いた。

「ぁ、勝呂くん…志摩君、三輪君も、コンニチワ…!」

条件反射で、ニコリと微笑む。

その綾の条件反射で出た花が芽吹いたような笑顔に、勝呂はあからさまに頬を染め、すぐにそっぽを向いた勝呂の『照れ』が見え見えの様子に、志摩が再び点いた笑いの火を堪えるために横を向いた。

そして、顔を背けたままで勝呂が少し不貞腐れたように口を開く。

「///っ、な…何をしてんねや…っ。早う行かんと、遅刻やろ!」

ムッとした様子の勝呂を、あれ?何か怒らせるような事しちゃったのかなぁ?、という顔をしながら覗き込む綾が志摩や三輪にチラリと目をやると、気にせんでえぇんよ!、と言う様な笑顔で、綾に目配せをしてくれた。

そんな二人にコクコクとそっと頷きながら、綾は再び歩き出した。

そして、ハァ…とそっと溜め息を吐いた勝呂も、その隣に並ぶ様に歩き出した―――――――。




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