ループ
□序章
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やっぱり妙な客だ…と思っている私の足元で、何か、ゆらりと動いた気がした。
ん…?
と足元を見ると、チリーン…と鈴の音が鳴った。
「な…に、これ?天秤…?」
ゆらりゆらりと私の足元でその身を動かしている。
「この店には…どんな客が来ますか…」
薬売りと名乗った男が、私のほうに顔を向けていた。その目に私の胸が騒ぐ。
「ど…どんなって、普通のお客ですよ…」
「ほぉ…普通ですか…」
っ…何なのこの人…!
目は涼しげなのに口が…嗤う口がやたらと艶っぽくて…ッ!!
やだ……私…顔が熱い………!
「クククク……」
「何か…可笑しいですか…ッ?」
「いえね、ちょいとばかり…」
薬売りの手が、おもむろに横に持ち上がる。
「気になることがあるもんで…」
その手は店の奥に向けられた。
「…何を…」
そしてその時、何かが店の奥へ続くくぐり戸の木枠に、ぐるりと囲うように張り付いた。
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