青の祓魔師 長編

□第八話
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というか、いつまでメッフィーなのだろうか。
個人的にメッフィーの方が良い。
しゃべらなければ可愛いのだから。


「すいません。ちょっといいですか?」

『すいません。ちょっとしゃべらないでいただけますか?』

「扉を開けていただけますか。この姿だとどうも不便で。」

『じゃあ元の姿に戻ったらいいじゃないですか。』

「ないとは思いますが、万が一生徒に見られたら大変です。」


ああ言えばこう言う。
このやり取り自体がめんどくさくなったわたしは、扉を開けてやることにした。
一声かけながら。


『これであなたに一つ貸しを作りました。』


たぶん・・・いや、絶対に今ドヤ顔になっているだろう。


「そうですか。しかし、残念ながら貴方は私に相当な貸しを作っているので
 私への貸しが一つ減った、といったところでしょう。」

『・・・・・・は?』

「ですから、貴方は私のおかげで祓魔師になり、私のおかげで衣食住不便なく過ごせるのですよ。」


ああ言えばこう言う。
どうやらわたしはこの言葉を忘れてしまっていたようだ。
さっきのドヤ顔した自分には是が非でも消えていただきたい。

ドアを開けてやると、目の前には結構豪華な家具が揃っていた。
少しばかし、和を強調している風な部屋
そして窓をバックに机がある。椅子がふかふかそうだ。


『クソ、これだから金持ちは・・・』

「なにかおっしゃいましたか?」

『いえ、なにも。』


作り笑顔丸出しで答える。
メッフィーが先に部屋に入り、わたしは扉を閉める。
再びメッフィーの姿を探すも、そこにはもうメフィストしかいなかった。


『さっさとしてください。』

「そんなにあの姿がお気に召しましたか!
 あの姿は女性受けが良いので私も気に入っているのですが少々不便でして。」


そんな事聞いてない。
しかし、これ以上返事をすると話が長引きそうだったので無視を決め込む。
わたしがここに来たのは、コートとバッチと鍵を貰うためだけだ。


『コートとバッチは届いていますよね?』

「はい、もちろんです☆」


語尾、☆マークつけたやろこいつ。


『では、鍵と共に早く出してください。』

「少々お待ちください。」


そういうと、後ろの机にあった袋をわたしに差し出した。
どうやらこれにコートとバッチが入っているらしい。

よーし、さっさと鍵もろうたら帰る!

長いは無用なのだから。
そう思いながら手を出す。


『鍵は?』

「貴女に渡すとなくしそうで怖いですねぇ。」


メフィスとは相当わたしのことをなめとるらしい。
大事な鍵、なくすわけないやろ!?
ほんま、阿保ちゃうか。


『なくすわけがありま・・・』

「首にかけておく、というのはどうです?
 これなら安心です☆」

『だからなくすわけ・・・』

「ちょっと待ってくださいねぇ。たしか丁度良い紐があったハズですので。」

『その必要は・・・』

「この紐はいかがです?まるで悪魔の炎のような色!!」


メフィストはわたしの言葉をオール無視。
自分の好き勝手にしている。
そして、わたしがため息をついている間に、鍵に紐を通していた。
そんなこと、だれも頼んではいないのだけれど。


「では、こちらが塾へと繋がる鍵になります☆
 首から外してなくす、などはないとは思いますが、気を付けてください。」


そう言いながら、メフィストはわたしに鍵のついた紐を頭から通した。
自然なその動作に不覚にも一瞬だけドキッとしてしまう。
当たり前だ。こんなこと異性にされたことないのだから。


「おや?貴女顔が・・・」

『ありがとうございました!失礼します!!』


そう言いながら走って逃げた。
なんなんだ、この無駄なフラグは!?


【本当に情けないのう。】


フィアナの本音が聴こえた。
自分でもそう思うので、反論のしようがない。


だけど、そんなことをされたのは初めてだったのだ。
そして思い出してしまった。

昔、父さんに同じようなことをされたのを。

小学生の頃に毎年夏休みの恒例行事、ラジオ体操。
その、スタンプを押してもらうカードを頭から通してくれたことが何回かあった。
もちろん、異性にされたことがないのでドキッときてしまったかもしれない。
だが、そういう理由も含まれているのだということを自覚した。

たぶん、フィアナの本音はその事を思い出してドキッときてしまったことにも
情けないと感じたのだろう。










まぁ、二度とメフィストにドキッとなることもないだろうが。





あ、メッフィーは別やで。
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