青の祓魔師 長編

□第八話
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さっきから視線が痛い。

ガン飛ばしてんじゃねぇよと不良が寄ってくるような顔立ちの勝呂くんからの視線。
とても痛い。


「おい衣織、お前さっきの・・・」

『あー!わたし理事長んとこ行かなあかんのや!』


我ながら棒読みすぎて酷い。
言い訳や嘘に見えるかもしれないが、事実なのは事実である。
しかし、今行かなければならないわけでもないのもまた事実だ。


『取りに行かなあかんもんもあるんや。
 せやからわたし、後で祓魔塾いくさかい先行っといてな!』

「あ、おいこら待て!」


廉造くんと子猫くんが手を振るなか、呼び止めてきたのはもちろん竜士だった。
しかし、当然走りを止めることはなく、逃げるようにその場を去った。


とりあえず今日はいろいろと質問されそうやなぁ、と思いながらメフィストが居そうな所に向かおうとする。
しかし、残念ではないが不便なことに、メフィストが居そうな場所など
知らないし、知りたくもないので外に出ることにした。

入学式が終わったら各自教室に戻り、自分の荷物を持って帰る。
そして授業は来週から。
しかし塾の授業は今日からで、一応講師であるわたしも早めに塾に行っておかなければならない。

だが、鍵をもらっていない。

だからこうしてイヤイヤ探しているのだ。


『メフィストさっさと出て来い!』


そう叫ぶと、目の前に真っ白で毛の長い憎たらしい、でもなぜか憎めない目をした犬がいた。
正直に言よう。

かわいい・・・

ピンクの水玉のスカーフを巻いている。
かわいい!めっちゃかあいい!!


『かわいい〜・・・こっちおいでー。』

【待つんじゃ衣織。こやつ、悪魔じゃぞ!】

『・・・あくま?こないにかあいいのに!?使い魔にしたーい!』


そう言いながら近寄ると、逃げないでいてくれたワンちゃん。
触ってみると、思っていた以上にふわっふわだった。
持ち上げて抱っこしてみる。


『かーわーいーいー!!もって帰りたいー!』

【・・・こやつ、メフィストと同じ匂いがするんじゃが・・・どういうことじゃ?】

『メフィストとおんなじ匂い?同じ眷属だからじゃない?』


そう言いながらぎゅーっと抱きしめる。
この、目が!目がかあいい!!


「そ、そろそろ離していただけませんか。息苦しいのですが・・・」

『きゃーっ!ワンちゃんがしゃべったでフィアナ!!かわええなぁ・・・・・・・・・んっ!?』


悪魔だからしゃべった・・・んやな。
せや、そうやないと。


『メフィストみたいな声やったで、今の。』

「貴方が私を呼んだから出てきたというのに・・・まったく。」

【じゃから言ったじゃろ。メフィストと同じ匂いがする、と。】

『・・・・・・メフィスト?』

「そうです。貴方着痩せするタイプなんですね。」


最初メフィストがなにを言っているのか分からなかったが、
自分が今、なにをやっているのかをよく考えると、ワンちゃんもといメフィストを離した。
わたしは胸の前でワンちゃんを抱っこしていた。
ワンちゃんを抱っこするときというのは、大抵胸の前でする。


『め、めめメフィスト!?』

「はぁ・・・紳士であるこのわたしが不覚にも思考を停止してしまいました。」

『・・・・・・・・・・・・』

「では、理事長室に行きますか。貴方にはまだいろいろと渡していない物がありますから。
 それから、この姿のグッズもありますのであしからず。」

『わたしメッフィーって呼びます。』


そう言いながら歩き始めたメッフィー。
たしかに可愛い。黙っていれば。
なので割り切ることにした。

メッフィー犬>>>>>>>>超えられない壁>>>>>>メフィスト。

これでいいだろう。
よし、メッフィーグッズ買ってこよう。
そしてよく見たらメッフィー、スカーフに祓魔師の証明パッチを付けていた。

どうして気がつかなかったわたし。
メフィスト抱っこしちゃったも同然。
チラッと横をみると、平然とした表情で歩いている。
まぁ、今はメッフィーなので表情が分かりにくいのだが、わたしはそう感じた。

わたしがイラつきと恥ずかしさで胸がいっぱいになっていると理事長室についた。
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