青の祓魔師 長編

□第八話
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「衣織、自分方向音痴なん分かっとるやろ!?
 せやのに勝手におらんようなって。迷子なったらどうするんや!あぁ?」

『け、携帯で・・・』

「自分がどこにおるんかも分からん、そのうえ周りの景色の説明も幼児並み。
 そないな奴は携帯持っとっても迷子んなったら意味ないんや!」

『幼児並み、は言い過ぎや!説明くらい人並みに出来るわ。』

「『車いっぱいおってー、ビルあないにいっぱいでー・・・あ、キレイなお姉さんの看板ある!!』
 こないな説明で分かるか!!」


竜士たちのもとへ戻ってきて早々のやり取り。
廉造くんと子猫くんは、わたしたちのやり取りを見慣れているせいで呆れている。
しかし、見慣れていない正十字の生徒は唖然としている。


「おい、なんで女子が男子用着てんだよ。」

「なんだなんだ?・・・あ、さっき大泣きしてた子じゃん。」

「え、恋人同士のケンカ?ちょ、ほかでやれってかんじなんだけど。」


口々に小さな声で言っている。
しかし、わたしたちを遠目で見ている生徒に“二人”で睨みをきかせ黙らせる。
それを廉造くんと子猫くんが必死に止める。

京都にいたときとあまり変わらない光景。

それから必死で睨みまくったおかげで有名になってしまったことに
まったく気がついていないわたしは、竜士たちと決められた場所に移動した。


【衣織すまない。】


歩いていると、突然フィアナに声をかけられた。


どうしたんや急に。

【妾の声が奥村燐に聴こえとった・・・】


は、意味が分からん。
フィアナの声ってそないに簡単に漏れるもんなん?


【人間は普通、聴こえん。じゃが悪魔が人間に憑依しておったら別じゃ。】

でも、メフィストと話してたときは聴こえてなかったやろ。

【それは妾にプライドがあったからじゃ。あんな奴に妾の声を聴かせるのはうやじゃ!】


それに、と続けるフィアナ。


【奥村燐が妾の声が聴こえるとは思ってなかったんじゃ。油断しておった。】


だから燐は急に後ろを振り返ったんか。
せやけど、別にええやろ。
どうせ燐には天使の事話すんや。


『せやからそないに気にせんでええで。』


・・・しまった。
つい、口に出してしまったらしい。


「は?」

「大丈夫やで衣織ちゃん。たま〜に女子用の制服着てくれるだけでええから!」

『は、はぁ?な、に言うとんねん・・・スカートってスゥースゥーするやん!!』

「女の子がそないな事言うたらあきませんで!!
 俺、衣織ちゃんのスカート見たいだけや。」

『キモイ黙れ。』


なんとかごまかせた。

そう思ったのもつかの間、竜士の方を見ると目が合った。
全然ごまかせられてへん・・・
めっちゃ怪しまれてる。

フィアナと話しててつい、口に出してしまったのはこれが最初ではない。
過去に何十回もあった。

部屋で一人だったから、フィアナと話してて怪しまれたり、
食事中にフィアナに「はぁ?あげるわけないやろ!」と叫んでしまったり・・・
そのたびに言い訳をし、そのたびに竜士に怪しまれてきた。

たぶん、精神的におかしな子やと思われとる・・・


【しっかりせい!もう妾も数えるの止めたぞ。】


フィアナに怒られながら、また歩き始めた。
わたしは後ろにいた竜士に、未だ怪しまれている事に気づいていなかった。
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