青の祓魔師 長編

□第八話
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目の前の燐が戸惑っている。


「は・・・だ、だって・・・衣織がそんな女っぽくなるわけねぇだろ!?
 なによりあいつは死んでんだぞ!」


なんで先に女っぽくない、いう理由が出てきたんや。
そないに女っぽくなかったんか、わたし。
しかし、そこにはあえて突っ込まない。
ややこしいことになりそうだからだ。


『わたしの死体出てきてないやろ?それにほら。』


そう言いながら制服から祓魔師の証である証明書を見せる。
ちなみにわたしの制服は男子用だ。
なんでって、ズボンのほうがええやろ。動きやすいし。


「下一級祓魔師 天園衣織・・・!?」

『せやでぇ〜、ちなみに称号は騎士。かっこええやろ。』


と、いっても所詮は下一級。一番下の階級だ。
だが仕方ない。未だコートも届いていない状態。
祓魔師になれただけでも奇跡だ。


『これで信用してくれた?あ、わたしが挙げたスキヤキセットどうやった?』

「・・・まじで衣織?」

『せやで、燐。』


わたしがそう言い終わると、燐はしゃがみこんでしまった。
どないした!?
そう思いながらわたしもしゃがむと、いきなり顔を上げて、こう言った。


「や、っぱり。・・・やっぱり衣織は死んでなかったんだな。」

『えっ!?』

「だって、衣織の死体はねぇってジジィは言うし
 遺書だって準備よすぎるだろ。だから、さ。」


今にも泣きそうな燐を見て、帰ってきてよかったと思った。
そしてわたしは謝った。
燐に会ったら三年間の事を謝るって決めていたから。


『騙しててごめんなさい。』

「衣織が生きてたからそれでいい!!」


燐が単純でよかった。

そんな事を思いつつ、燐に抱きついた。


『燐ありがとう・・・ずっと後悔してたけど、燐に会いたかったぁ・・・』

「え、あ・・・ちょっ、おい!」

『り、ん・・・会いたかった。遺書に、書いたお願い・・・ごめん。』

「・・・え、」

『父さん、死んだ日・・・わたしに謝ってた。
 その時書かなきゃよかったって思った。』


ここが学校だという事も忘れて泣きじゃくっているわたし。
本当はずっと泣くのを我慢してた。
理由はいたって簡単。
泣いたらわたしが今まで強がっていたことがバレてしまうから。

そして涙と一緒に、心でためてた後悔も言葉となって出てくる。


『それに、わたしがもうちょっと早く修道院に行ってれば・・・』

【衣織、それはもう・・・】


いままで静かにしていたフィアナが口を出す。
フィアナはもう、わたしにこの事について後悔してほしくないらしい。

しかし、フィアナに続きを言われる前に燐が叫ぶように否定した。


「なんでだよ!お前は悪くねぇだろ!!
 あれは、俺が弱かったからだ。お前は悪くねぇ。」


そう優しく言いながら背中をさすってくれた。
少し嬉しくて、心の荷が軽くなった気がして、燐に抱きついた。

しかし、なぜか燐の様子がおかしくなった。


「あぁぁ、ああ、あたってる・・・!!」

『・・・な、に?』

「い、いいから離れろ!」


そう言って剥がされた。
それから燐が立ち上がり、わたしに手を差しのべる。
新品のブレザーで涙を拭うのに抵抗を感じたので左手でハンカチを探し、右手で燐の手を取る。


『・・・っ、ありがとう。』

「泣くな!なんか俺が泣かしたみたいだろ!?・・・なっ?」

『・・・・・・せやな!』


そういって笑うと、燐が顔をそむけた。
照れとる燐を見るんも久しぶりやな。

立ち上がり、やっと自分たちが注目の的となっていることに気がつく。
鈍感な燐でもさすがに気がついたらしい。顔が真っ赤だ。
どうしようか、こんなに目立ってしまっては困る。
ただでさえ、女子であるわたしが男子制服を着ているだけで目立つというのに。

自然に周りを見渡してしまう。
すると、生徒と生徒の隙間から竜士たちの姿が見えた。


【見つかったらどうするんじゃ!説教されるぞ。】


わかっとるわ!竜士の説教なんか聞きとうないわ!!
そう言い返しそうとしたとき、燐が急に後ろを振り返った。


「っ!?・・・・・・さっきも聞こえた声・・・」

【なっ、此奴・・・】


え、なにが?
そう思った瞬間、竜士がわたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
黙って燐のところへ行ってしまったせいか、竜士の声はとても恐かった。


『うわっ、燐じゃあまた後で!!』


そう言いながらわたしは竜士たちのもとへ走っていった。
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