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□汝、人成りしか
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side.ベスビア
俺はずっとカールスに勝ちたかった
物心ついた時から家や国の事で色々と言われていたが、ずっとそれを実力のみで黙らせてきた
結局、自分の意思を主張するには力が必要なのだと幼いながら理解した
そしてそれは、格式と伝統を誇るクラスターE.Aでも変わらなかった
なのにアイツは、急に目の前に現れて軽々と俺の上を行く
そのくせに張り合うこともせず、生徒会選挙も出ない
飛行機レースで自分が1番になれたのはライバル-俺-がいるからだとかぬかしやがる
優等生で人格者、他人を蹴落としたり出し抜いたりはしないアイツに、誰もが憧れていた
馬鹿にされている気分だったよ
俺は対等な人間が欲しかった
陰口を叩く奴らとは違う、実力で渡り合える他者が
だからこそ俺は認められたかった
共に競い、そして勝ちたかった
なのに、そんな俺の思いを知っておきながら"勝つこと"にまるで興味のないアイツが許せなかった
カールスは全力を尽くしても勝てない俺を笑いもせず、労い、褒める
「自分よりもまともな人間だ」と
お前よりまともな人間など居るものかと怒り、殴り、罵ろうが、アイツは俺に敵意を向けたりしなかった
最後には必ず、謝るのだ
(ごめん、ベスビア。許してほしい)と―
雪の降る日にアイツは学園を去った、何も言わずに
最高に腹が立ったよ
エマには伝えていたらしいがな
肩さえも並ばせてもらえずに、ずっとアイツの背中を見てきた俺に何も言わずに消えたことが悔しくて何より、悲しかった
俺は、ヤツの対等にはなれないのだと
エマのような親友にもなれない
なぁ、お前にとって、俺は何だった?
俺は学園を卒業してからもずっと、ずっとカールスを目標にしていた
軍に入り、訓練に耐え地位と権力も得た
そんな時だ、反政府の主力にヤツが居る事を知ったのは
―あぁ、やはり俺たちはライバルなのだ―
交戦している内に本格的な戦闘になり、俺が追っている機体にカールスが乗っているとわかったときは決着が着くんだと歓喜に奮えた
やっと蹴りがつけられると、お前と競えるのは俺だけなんだと
他の誰かがアイツを殺すなんて許せない
だから、俺が殺した
俺は勝ったんだカールスに勝った