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□切った男。
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最近、よく見掛ける男がいる。
数ヵ月前、初夏に始めて会ったその男はいきなり俺に文句をつけ始め、それがどうにもガキ臭かったので放っておいたら熱くなりやがった。

サングラスを外したその男は、恐らくイケメンの部類に入る。
そして所謂≪チャラ男≫とか言われる人種だろう。

そいつが――何かやたらと文句を言っている。

面倒くせぇ。
こいつ、普通にしていたらモテるだろうに。
ああ、あれか。

「残念なイケメンか」
「なんだと!」

しかし、≪イケメン≫とつけた事に対して満更でもない様で、視線を泳がせた。
照れているのか?面倒くさい。

男は身内に呼ばれた様で、俺を気にしながらも舌打ちをして去って行った。
関わらない方が絶対良い。

と――自分の長い髪が気になった。
そう言えば最後に髪に鋏を入れたのは何時だったか。





***



「あ、あれ?殿!?」

家に戻ると、俺の迎えを待たずに先に戻っていたまいが、俺を見るなりお帰りなさいも言わずに驚いている。

「頭どないしたん!?」
「先にお帰りなさいだろ。それに頭じゃなくて髪だ」
「お、お帰り…。ほんでどないしたん?バッサリ髪切って。失恋でもしたんかぁ?」

ニヤニヤと笑いながらガキが訪ねて来た。

「失恋?俺は振っても振られた事はない」
「うわっ!嫌味や!!」

美容師が話し掛けてくるのが面倒で、なかなか店に行かない俺の髪はかなり伸びていた。
長いままだとまたあいつに出くわしそうな気がしたので、切りに行ったら案の定。
億劫な時間だった。

「うん、でもまぁ、エエ感じやん。またモテそうやなぁ」

等とガキが言うので、

「心配するな。俺にはお前だけだ」

と、抱き寄せて心にもない事を口にする。
最近はそう言う事に何か言うのが面倒なのか、「ハイハイ」と面倒そうに言う様になった。

「明日のハロウィンパーティー、ちゃんと連れてってや!」

パーティ会場はクライアント――こいつの兄達が勤める店で行われる。
久しぶりに会える事が楽しみらしい。

軽くなった髪同様、明日ぐらいは俺も肩の荷を下ろそうか。








20121029
 

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