短編

□決意
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春―――






現在オレは薩摩藩邸からの帰りに、姉さんのために団子を買って寺田屋へ戻る途中ッス



今日はオレ以外の皆は長州藩邸へ行っているから今帰ればオレと姉さんの二人きりッス!

 

帰ったら姉さんとどんな話をしようかと浮足がたつ。



姉さんは今何してるのかな?

庭の掃き掃除?それとも今日は天気がいいから洗濯かな?


なんにせよ早く帰ろっと!



オレは急いで帰った。












寺田屋に着くと一目散に姉さんを探す。



「姉さん!今帰ったッス!」



辺りを見渡せば、庭の方に姉さんの姿を見つけた。



「姉さん!」



姉さんもオレに気付いてこっちに振り返ったとき






ビュオ―――ンッ






「きゃっ」



いきなり強い風が吹いた。


オレは片腕で風をしのぎ、目を細めていた。


風が弱まり、目を開けるとそこには乱れた髪を耳にかける姉さんが映った。


その様子はとても艶やかで美しかった。



「―――綺麗ッス・・・」


「え?」



思わず口から本音が出てしまった言の葉は、風に乗って姉さんに届いたらしく、顔を紅潮させている。


そんな姉さんが可愛くて、堪らなく愛おしい。

 

「慎ちゃんおかえり」


「ただいまッス」



笑顔で迎えてくれる姉さんはオレの疲れを吹っ飛ばしてくれる。



「慎ちゃん、手に持ってるのなあに?」


「あ、そうだ!オレ姉さんに団子買ってきたッス!」


「えっ!ホントに!?嬉しい、慎ちゃんありがとう!」


「ふっ、本当に姉さん団子好きッスね」


「うぅ・・・だって本当においしいんだもん。私お茶入れてくるね」



パタパタと台所まで行く姉さん。


その間にオレは縁側に腰を下ろす。

 

姉さんが喜んでくれてよかった。
こんな天気のいい日に寺田屋で一人っていうのは寂しいッスからね。


いつもはこうやって姉さんといると必ずって言うほど邪魔が入るからなぁ


龍馬さんなんてすぐにやって来て間に割り込んでくるし!


あの人は姉さんに対する感が強すぎッスよ・・・


いやいや、オレだって負けてらんないッス!


鈍感な姉さんにオレの気持ちを気付いてもらうには、あのくらいやらないと駄目なんス!



「おまたせ、慎ちゃん。はいお茶」


「かたじけないッス」



オレの隣に座って団子を美味しそうに頬張る姉さん。

自然と顔が緩んでしまう。


 
姉さん、オレ頑張るッスからね。


大人な龍馬さんや武市さんに負けないくらい頑張るッス!!


背だってもっと伸ばすように小魚食べるッス!!



だから―――――















待ってて下さいね















 <完> 

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